内容説明
イメージは頭にあるのだろうか、それとも身体が感じるのだろうか、そして言葉はそれとどのようにかかわるのか。人は時間を、そして音をどのように知覚するのか、あるいは、それは客観的に計測できるのか。哲学や諸科学がさまざまに論じてきたこれらの問いに正しい「表現」を与えるべく、世界的ミュージシャン・坂本龍一の問いかけに、時間と感覚について独自の思考を展開させてきた哲学者・大森荘蔵が応える先鋭的な哲学講義録。1980年代の傑作対話がここに。
目次
第1講 見ることと聴くこと
第2講 “今”とはどういう時間か
第3講 イメージは頭蓋骨の中にあるか
第4講 風景を透かし視る
第5講 未来が立ち現われる
第6講 “私”はいない
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
goro@the_booby
45
読メ登録記念すべき1000冊目となりました。南木佳士氏の本から哲学者大森荘蔵氏を知り読みやすいのは無いかとこの本に辿り着きました。坂本龍一氏との対談形式による講義の体裁をとってますが、哲学とはなんとも難儀な学問ですわ。しかし大森先生でも言葉に出来ない、まだそれを表す言葉が無いと悩んでいる姿に親近感を覚える。「今」とはなにか?「永遠の今」が溶解するとの言葉はイメージし易いかと思う。まぁ難儀な事ですが興味は尽きないですわね。2018/06/30
おとん707
11
東京都現代美術館で開催中の「音を視る 時を聴く 坂本龍一」展を観た。そのあとで展覧会と同名の本書を知って読んだ。展覧会は坂本が生前構想していた音と映像の創り出す時空を再現ないしは深化させた視聴覚創作パーフォーマンスといったもの。予備知識なしだったが私は無限に続く時空間と人生の一瞬みたいなものを感じた。本書も時間と空間の只今この瞬間の「現在」という微小点とは何かを深く考えるもの。ただ坂本は聴き手で、哲学者大森荘蔵の講義を受ける形。坂本の考えが大森に上書きされてしまった感もある。もう一度展覧会を観ようかな。2025/02/01
Akki
7
西洋的な、あるいは自然科学的な見方では、現在や心や私を記述できない。なぜなら時間にも、世界と自分の間にも、切れ目や境界というものを定められないからだ。言いたいことはなんとなく分かる。しかしそうだとすれば、そもそも2人のテーマや疑問「見えるとは?」「聴くとは?」も、感覚を要素に分解してしまっているので、そもそも答えが出ないなと思った。問いが成り立たないというか。自家撞着に陥っているというか。とはいえ企画ものだと思うし厳密性を求める類の本ではないから、わりとラフに楽しんで読んだ。2024/03/30
i-miya
7
おわりに 大森荘蔵 音 無常性をもっともあざやかに示す感覚 音は生まれるときが消えるとき 物ばなれして 場的なのだ 中野幹隆 朝日出版社 講義を受けて 坂本龍一 1982.10.10 出版 《用語解説》 ① (1)音 弾性振動の波 16-20ヘルツ (2)分解能 (3)仮現運動 (4)オクターヴ 周波数の比が2:1になつ音程に間隔 (5)フーリエ解析 (6)フッサール (7)レテンツィオーン、プロテンツィオーン 話終りつつある言葉 今もありありと把持 次に話すべき言葉 既に今予持2007/08/07
kera1019
6
哲学講義って言うと何か敷居が高そうやけど、以外とすんなり読めました。見る、聞くと云う認識を解体して概念を捉え直すという作業も坂本龍一にかかると哲学と云うより詩的な感じがする。2013/10/01