内容説明
第1巻「狂気・理性」では、西欧の理性がいかに狂気を切りわけてきたかという最初期の問題系に焦点をあて、『狂気の歴史』『臨床医学の誕生』に結実した“心理学者”としての顔に迫る。処女論文「ビンスワンガー『夢と実存』への序論」、「『狂気の歴史』初版への序」の他、最初の日本訪問時における講演・鼎談などを収録。
目次
ビンスワンガー『夢と実存』への序論
心理学の歴史 1850‐1950
科学研究と心理学
『狂気の歴史』初版への序
狂気は社会のなかでしか存在しない
ルソーの『対話』への序文
父の“否”
狂気、作品の不在
哲学と心理学
宗教的逸脱と医学
十七世紀の医師、裁判官、魔法使い
文学・狂気・社会
狂気と社会
著者等紹介
フーコー,ミシェル[フーコー,ミシェル][Foucault,Michel]
1926年フランス・ポワティエ生まれ。高等師範学校で哲学を専攻、ヨーロッパ各国の病院・研究所で精神医学を研究する。1969年よりコレージュ・ド・フランス教授。1984年没
小林康夫[コバヤシヤスオ]
1950年生まれ。東京大学教授
石田英敬[イシダヒデタカ]
1953年生まれ。東京大学教授
松浦寿輝[マツウラヒサキ]
1954年生まれ。東京大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マウリツィウス
27
【『《狂気と普遍》』】古典と古代、ジョイスとエーコ、ギリシャと現代思想、フーコーとフーコー、「『狂気』を巡る問い」。《正体と真実》、「《姿を現していく》」。《その『真実』とは「何か」》、《「ヒトの思惑」とは必ずしも『永遠』を意味しない》。《『狂気と葛藤』を「経巡る」》。《「『真実の姿』とは偽ることがない」》。《『鏡』に宿る「謎」、「『鏡』には必ず映る」、「その個人の本性」》、《「偽ることなき姿を見据えよ」、「それは『貴方』なのだから」》。/《ヒトのウソの無い姿を見たい》、「今後、読書の目印へ」。:20世紀2015/03/22
白義
14
狂気を主題にしたフーコーの問題意識の一貫性とともに、その方法論の変遷、時代からの影響も読めるアンソロジーである。処女論文では夢自体を意味を読み解くためのメッセージではなく、それ自体が想像力の起源となる独創的な内的リアリティで描いているが、その後の論文はむしろ歴史的、社会的に西洋が以下に狂気が他の概念とともに編成され、時代の中でどう位置づけが変わっていったか、というのを文学や心理学史からも読み込み一気にその後のフーコーの思想になっていく。総合的人間学の構想から人間というものの解体へという歩みを読み取れる編集2016/12/22
ラウリスタ~
11
狂気について。なんか読んだことある文章多いなと思ったら思考集成とだだかぶりだからか。日本訪問時のインタビューも分かりやすいし面白い。彼が自らを哲学者だと自認しない理由が面白かった。哲学が大学教授の仕事となり、かつて哲学で行われていたことが、今は違う名前で呼ばれている分野で行われているからなのか。ヘルダーリン、ルーセルとかも少しは読むようになったからか、昔ほどの抵抗なしにすらすら読める。2014/03/02
roughfractus02
10
本巻は『思考集成』全10巻の主要論文を6巻(別巻1)に文庫化したシリーズの最初の巻である。1960年代を中心に、言うこと(言表)と見えうること(可視性)の関係が正常なる規範を編成する過程を、18世紀の狂気と理性をテーマとして考古学的手法でそのエピステーメーを検討した論考13編が収められる。著者は、世界と対応する正常な言葉(表象作用/言説)から逃れる夢や狂気の言表を精神医学の実存の扱いや文学の描法に見る。さらに狂人の声の言説化、印刷化を拒みつつ正常を構成した資本主義社会と同時期に登場した精神医学を批判する。2024/12/02
訃報
8
半分も意味はわかってないけど、部分的にでも、何かが自分の中に根付いてきている感じがする。夢とは何か。狂気とは何か。真理をあらわにする狂気。すべての創作行為は狂気なのだということ。自分がなぜ昔から狂気というものに興味を持っているのかが分かってきた。2017/01/25