内容説明
ヨーロッパ文明とオリエントの相克を見つめ、排他主義、分離主義的な西欧的価値観に鋭い異議を唱えてきたサイード。二〇世紀後半もっともアクチュアルな闘う知識人が、思想界に新潮流を生んだ古典的名著『オリエンタリズム』や『文化と帝国主義』などの自著を語り、パレスチナ問題とのかかわりを広い視野から検討する。異色のコミュニティ・ラジオ番組で長期に重ねられたインタビューをもとに、平易な語り口のなかにルネサンス的教養人サイードの批評の真髄と情熱を凝縮させた一冊。
目次
第1章 パレスチナ人の祖国追放をめぐる政治と文化
第2章 オリエンタリズム再訪
第3章 ペンと剣―文化と帝国主義
第4章 イスラエルとPLOの合意―批判的評価
第5章 パレスチナ―歴史への裏切り
著者等紹介
サイード,エドワード・W.[サイード,エドワードW.][Said,Edward W.]
1935年、イギリス委任統治下のエルサレムに生まれる。カイロのヴィクトリア・カレッジ等で教育をうけたあと、プリンストン大学、ハーヴァード大学で学位を取得。コロンビア大学で英文学・比較文学を教える。2003年没
バーサミアン,デーヴィッド[バーサミアン,デーヴィッド][Barsamian,David]
米国コロラド州在住。独立系ラジオ局オールタナティブ・ラジオのプロデューサー
中野真紀子[ナカノマキコ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
39
訳注と索引があり、しっかりした本です。インタビューで率直に語られています。7年間の間に5回なされており、本書が5章立てなのはそのためです。7年間も人間関係を維持してインタビューし続けられたということは、インタビュアーもしっかりした人物だということが推測できます。今起こっているようなパレスチナ問題の歴史的経緯がややこしく、日本人がそこまで詳しく知らなくても良いと思いますので、ざっくり飛ばし飛ばし読んでも罰は当たらないでしょう。2021/05/28
壱萬参仟縁
7
1998年初出。9.11は出てこない。「サイードは、人生において理念と現実が偶然にも一致するという、希有な運命を与えられた人間」(010頁)。勇気、勇敢。インタビュー集でその片鱗を伺い知る。パレスチナという土地はかつて存在していたし、パレスチナ人も450万人いる(036頁)。彼らを抹消したがる傾向は、世界人権宣言や地球市民からしても問題に思える。四方八方の文化の交錯点としてのカオスを感じる(040頁)。10年前亡くなったサイード氏の願いは、女性や恵まれない人々が差別されない国(051頁)。人権擁護を希求。2013/03/07
kanako
5
サイードのインタビュー集であり、主著の概要を知るにも、彼自身を知るにも格好の書。地に足の着いた感じが凄く好感持てる。そして誠実さ。見習いたい。2010/11/04
ラウリスタ~
5
オリエンタリズム読む前にこっちを読んでもよかったかも。大学教授だけあって、おもしろい教授の授業を聞いているみたいです。そこで大事なのが聞き手。バーサミアンさんっていう人もいいとこをしっかりついている。話がこんなにしっかりとかみ合っている対談集って案外ないものです。2010/07/24
大ふへん者
4
サイードは怒れる知識人として、パレスチナ人として何をなすべきかという問を体現し続けている、尊敬すべき人物だろう。p84「肝心なのは、怯まずに続けていくこと、自分が何をなし何を語るかということの方が、我が身の安全を心配するよりずっと重要だということを肝に銘じることでしょう。」御用学者に聞かせてやりたい。2013/11/06