内容説明
言葉、物、思考、行動、感覚、感情の動きかた、自己性と他者性、時間分節―人間を成立させている、これらすべてが“力としての歴史”に依拠している。逆に、ひとたびそれを失えば、人間は“狂気”という名の祝祭に入っていく。二〇世紀的狂気と、それを追尋してきたはずの、精神病理学の失敗の意味と運命、そしてそこで照射されてくる人間の最奥部を問う。衝撃の意欲作。
目次
歴史の概念
失敗した学問
分裂病と“歴史不在”
分裂病中心主義の世紀
病みゆく大衆
フロイトの遺言
ナチズム―“歴史不在の想起”としての
人間学的不均衡の根源について
「病みゆく」ことへの抵抗
“歴史”は病まない、ただ消え去るのみ
「病む」ことの自乗を生きるひとたち
精神病理学の潜勢力
来るべき精神病理学に向けて
著者等紹介
渡辺哲夫[ワタナベテツオ]
1949年茨城県生まれ。1973年東北大学医学部卒業。都立松沢病院、東京医科歯科大学勤務を経て、正慶会栗田病院院長、東京医科歯科大学医学部臨床教授を歴任。医学博士。精神病理学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぼっせぃー
1
分裂病(統合失調症)の患者を指し『四人が四人とも日常動作、日常行動の困難そして不可能あるいは失敗を訴えている点、特に留意されねばなるまい。ここには「歴史が人間をつくる」という命題における「歴史」の〈不在〉の帰結が痛ましいまでに鮮明に露呈している。』なんて言ってるけど同業者から見てドン引き。筆者は臨床が長いと豪語しているけど、統合失調症に対し我流の認識論で治療をしようとしていた節が。大仰な言葉を振り回して「1世紀かけて大きな物語の価値が揺らいできて、存在論的不安が高まった」というだけの話してます?まさかね。2020/09/15
大ぶぶ漬け人
1
言っては悪いが、文章がこなれていないように感じた。自分には合わなかった。内容は哲学方面の引用などが多く、事前知識のある人間向けのお高くとまった本。まかり間違っても知識のない人間が読むものではなく、内容を追うのに非常に苦労する(した)。せめて文体から感じる人柄が面白ければ良かったのだが、“権威はあるが教授は苦手”な知識人らしき語り口。さほど良い本ではないと感じた。2013/02/26
根室
1
読むのがすごく苦痛だった
ゲニウスロキ皇子
1
初見の感想は「この人大仰だなあ。まるでポストモダニストの悪いところを積め込んだかのようだなあ」というもの。でも中身は結構面白かった。20世紀を、「いま・ここ」を無意識に規定する〈力としての歴史〉喪失し、狂気に堕する過程と捉えている。物語がもはや力を失い、枷を外された野放図な主体性が氾濫する20世紀。その中でいわゆる「分裂症患者」は〈力としての歴史〉を取り戻さんと、敗北を決定づけられた闘争に独り挑む。そこに著者は何を見るのか。詳しくは本書を手に取っていただきたい。2009/12/29
あーさー
0
詳しくはmixi2007/12/16