内容説明
平安時代末の仁寛を流祖とする真言立川流は、密教理論の要ともいうべき即身成仏を実現するために、男女交合の性愛秘技をもって可能だとした。また鎌倉時代の『愛法用心集』には、死者の髑髏を本尊に仕立てあげるための過程が入念に記述されている。こうした教え、実践、修行ゆえに正純な密教からは徹底的に弾圧され、その典籍も破棄されるなどして、立川流の実像は、長い間歴史の闇に葬り去られてきた。本書は、立川流の教義を改めてつぶさに検討し、逆説的に正純な真言密教の本質や構造を浮き彫りにすると同時に、立川流の奥義に込められた生命、人間存在の解釈をエロスとタナトスの回路を通じて提示する。
目次
1 仁寛の登場
2 邪教立川流とは何か
3 流刑地の仁寛
4 邪法と立川流の構造
5 立川流と大宇宙の霊力
6 立川流的視点のおこり=清瀧明神
7 双身歓喜天(聖天)と真興夢想記
8 仁寛のみた立川流の心象
9 文観弘真のこと
10 玄旨帰命壇と立川流
著者等紹介
真鍋俊照[マナベシュンショウ]
1939年東京生まれ。高野山大学文学部仏教学科卒業。東北大学大学院文学研究科(インド学仏教史学)修了。東北大学助手、奈良国立文化財研究所文部技官、神奈川県立金沢文庫長、コロンビア大学(中世日本研究所)特別研究員などを経て、現在宝仙学園短期大学学長(教授)。文学博士。専攻、仏教美術史
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感想・レビュー
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HANA
56
邪教と呼ばれ歴史の闇の中へと埋没した真言立川流。本書はその内容に迫る一冊。なのだが極めて読みにくい。内容を理解するには真言に関する知識が十分備わっているのが前提な上、体系的にまとめられたものではなく内容があちこちに飛ぶため読んでいるこちらは付いていけない。立川流に関する学術書というよりはその周辺を描いた随筆といった趣。かろうじて理解できたのは本尊の作り方だけなのだが…。あとネットで調べると現在では本書と違った学説が色々出てきているみたいです。学問の世界は更新されるというか、色々と難しい一冊でありました。2024/04/25
眉毛ごもら
4
あなたのいわゆる立川流はどこから?私は高校のときに読んだ狂骨の夢から!と言うわけで邪教と呼ばれた立川流について調べようと本を買った。ついでに調べたWikipediaで驚愕の真実を知る。邪教としての立川流は無く文観を貶めるための偽造であり立川流自体には文観は関わりのなかったこと、髑髏本尊等の儀式を行った集団は独自の名前を持たない弱小宗派だったと……。あれ…これもしかしてこの本の基本設定が崩れてますん?Wikipediaの記述は記述としてこの本はこの本として知識を棚上げをして今後検証しなければならないぞぉ…。2022/02/24
SAKU
2
『異形の王権』の主役ともいえる後醍醐天皇や怪僧の文観が信仰したとされる立川流。その立川流に書かれた書だが、後半から仏教用語のオンパレードで案の定、よく分からなくなった。(笑)仏教の入門書をいくつか読まないと概念など分からないな。2024/06/23
非実在の構想
2
歓喜天さんの図絵がたくさん載っているのは良いが、雑漠としていて小説なのかエッセイなんだかよく分からない2020/05/11
南註亭
2
何度目かわからない再読になります。単行本での初刊は1999年の1月。半年ほどたってからようやく購読した。最初に読んだ真鍋氏の著作は、『曼荼羅美の世界』人文書院(1980/10/10)だったと思う。また、現在は品切れか絶版になっているが『マンダラは何を語っているか』 講談社現代新書(1991/9)は安価な新書だったが内容的には大変高度なもので参考になった。曼荼羅については真鍋氏と宮坂宥洪氏の著作に教えられました。本書のオススメ度は、☆☆☆☆☆ 5つです。2011/03/06