ちくま学芸文庫
知覚の呪縛―病理学的考察

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  • サイズ 文庫判/ページ数 235p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480086808
  • NDC分類 493.76
  • Cコード C0147

内容説明

重篤な分裂病者の言葉に徹底的に耳を傾け、その世界に身を投じ、自らを変容させ、その変容を論理的に記述、分析、哲学的考察を加えることで、初めて立ち現れてくる分裂病者の世界。私たちが抱く「分裂病」の一般的イメージを根底より破壊する衝撃の一冊。

目次

世界没落
瓜二つの世界
知覚の呪縛
他人の消去
肉体自我
言葉
禁止と交流

著者等紹介

渡辺哲夫[ワタナベテツオ]
1949年茨城県生まれ。1973年東北大学医学部卒業。都立松沢病院、東京医科歯科大学務経を経て、現在、正慶会栗田病院副院長。東京医科歯科大学医学部臨床助教授。医学博士。精神病理学専攻
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感想・レビュー

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またの名

6
「ワラ人間さまにオカコマレされています、オタチギエになります、ワラ地球はオトチの上飛んでるんです」…捉えようによってはホラー以上に恐るべきビジョンを語る患者の言葉から、その妄想世界が創り出す奇怪なトポロジー空間に、精神分析・現象学・大森哲学等の諸概念を活用しつつそれらに囚われずに分け入っていく。既存の理論図式をただ当てはめて終わるようなことはしないので、奇怪な世界を説明する著者の言葉も必然的に独特の異様さを帯びざるを得ない。分裂した死の欲動に責め立てられた身体が欲望の対象として交流を回復しようとする軌跡。2013/12/08

nickcave

1
精神科医による、統合失調症患者の治療過程が書かれた本。「ワラの家」「オトチ」といった言葉で語られる患者の不可解な世界の地図が、著者の深く鋭い考察によって糸を紡ぐように素描されてゆく。やがて著者は通常の心理療法の枠を超え、「その世界に組み込まれ」、「不可能な行程の中の地図に嵌め込まれて」ゆくことにより、真なる他者としての鏡となって患者の前に立ち現われ、その自我を映し出し、現実世界との関係性を回復させようと試みる。著者の文学的な表現力も手伝って、「統合が失調された未知なる世界」の冒険譚を読むかのよう。2016/05/06

ライトン

1
精神科医である著者がある患者との10年間の診察の考察をまとめたものである。この患者は一般的には分裂病と診断されるが、著者はそもそも「分裂病」という言葉のくくりに疑問を投げかける。そして患者の支離滅裂な言葉を解読し、徐々に患者を2元的、無機物的な世界から現実の世界へ戻そうとする。文章のレベルがとても高く正直よく分からない部分が多かった2013/04/09

歩き

1
分裂病と言われる事態がよくつかめていなかったので、その雰囲気を味わえた。あくまで一事例の記録であるけれど、他の本とかの記述と重なる部分もあり。シュレーバーとかも読もうかな。2012/02/17

ありす

1
後書きにあった精神病理学の没落について、現代思想なんかと関わったからじゃないの?と思った。症例の描写は凄かった。面白い。2008/11/05

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