内容説明
『神話から物語へ(ハディングスのサガ)』は、サクソ・グラマティクス『デーン人の事績』中の一物語の研究。特定著者による神話の翻案・変奏の手法分析の試みは、文芸理論として読むこともできよう。『戦士の幸と不幸』は、第二機能に焦点を合わせた重要作。戦士および戦士機能が宿命的に帯びる諸相、その栄光と悲惨、功業と罪と罰がいきいきと描かれる。比較の触手は北米インディアンの儀礼にまで伸び、いっそう広範な視野をもった。ともに本邦初訳。デュメジル神話論集成たる本コレクション全四巻は、ここに完結を迎えた。
目次
神話から物語へ(ハディングスはヴァイキングのハスティングではない;ハディングスとヴァン神ニョルズ;ハディングスの二つの生;最初の神話的脱線;第二の神話的脱線;ハッディング一族)
戦士の幸と不幸(奉仕;宿命;昇格)
著者等紹介
デュメジル,ジョルジュ[デュメジル,ジョルジュ][Dum´ezil,Georges]
1898‐1986年。フランスの比較神話学者。高等師範学校卒。49年コレージュ・ド・フランス教授、79年アカデミー・フランセーズ会員。「新比較神話学」を確立し、バンヴェニスト、レヴィ=ストロース、フーコーらとともに人間科学全般の革新に寄与した
丸山静[マルヤマシズカ]
1914‐87年。批評家・元愛知大学教授
前田耕作[マエダコウサク]
1933年生まれ。和光大学教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
神話を構造と見ると神々は関係項に、集団は階層ネットワークとなる。印欧語族の「伝承圏」に統治と支配、戦闘、生産の3機能から成る神話構造と捉えた著者は、「神話から物語へ」で、神々の関係で宇宙観を表す神話から神々の関係を因果関係に還元して時系列に変える物語へと転換する過程を、北欧神話「ハディングスのサガ」に見る(集団内の3項関係→恋愛の三角関係)。またインドとローマと北欧の戦闘神を比較した「戦士の幸と不幸」はP・クラストル「未開人戦士の不幸」と傍に置くとシャーマニズムとトーテミズムの戦士機能の違いを理解できる。2024/03/12