内容説明
「私が書いたもののなかで最も良い本であると同時に最も親しみやすい本」と自ら述べた奇才バタイユの最後の著書。人間にとってエロティシズムの誕生は死の意識と不可分に結びついている。この極めて人間的なエロティシズムの本質とは、禁止を侵犯することなのだ。人間存在の根底にあるエロティシズムは、また、われわれの文明社会の基礎をも支えている。透徹した目で選びぬかれた二百数十点の図版で構成された本書は、バタイユ「エロティシズム論」の集大成。本国フランスでは発禁処分にされたが、本文庫版では原著を復元した。新訳。
目次
第1部 始まり―エロスの誕生(死の意識;労働と遊び)
第2部 終わり―古代から現代へ(ディオニュソスあるいは古代;キリスト教の時代;結論に代えて)
著者等紹介
バタイユ,ジョルジュ[Bataille,Georges]
1897-1962年。戦前から戦後にかけて、文学・芸術・思想・社会学・人類学・政治など広範な領域で批評活動を行い、現代の思想、文学に大きな影響を与えつづけている。著書に『無神学大全』『呪われた部分』『エロティシズム』『宗教の理論』『至高性』など。小説に『青空』『眼球譚』『マダム・エドワルダ』など
森本和夫[モリモトカズオ]
1927年奈良県生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京大学名誉教授。デリダやバルトなどフランス現代思想の翻訳書、比較思想関係の著書多数
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感想・レビュー
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双海(ふたみ)
10
図版がたくさん挿入されています。私は不真面目な読者なので図版を見ながらパラパラ読み飛ばしました。2014/09/19
しゅん
8
上野のクラーナハ展を観た後に。ラスコーの壁画からルネサンス絵画、シュルレアリズムまでを貫くエロティシズム。共通する要素は死。人間が死を意識したからこそ、はじめてエロスが生まれたというのがバタイユの人間論の主題だ。エロスを誕生と結びつけるプラトンとは対照的というか表裏一体というか。ともかく、切り刻まれる中国人の処刑写真を見れば、そこに現れる性的ななにかに気づくだろう。多くの図像を収録した贅沢な一冊。キリスト教への愛憎を燃やし、二つの大戦の時代を生きた老人は、迫り来る死に向けて苦悶と悦びの涙を流す。2017/01/05
Ex libris 毒餃子
5
バタイユ『エロティシズム』の資料集的な本。次に『エロティシズム』を読むならば(または、バタイユの関連書物に触れたならば)良い本だと思います。バタイユは絵画や図版から説明するので説得力がある気がします。2015/05/06
ラウリスタ~
5
300ページを超える本ではあるが、絵、写真が非常に多いので実質100ページ弱くらいか。終わりの方にある中国での処刑写真はちょっと見ないほうがいい。ラスコーの洞窟の絵画、ディオニュソス、勃起した男根を伴って描かれたギリシャの絵画などなどについて語られる。バタイユのエロティシズムについての二つの本の続編的性質か。2013/06/01
明石
4
エロスの歴史の抄訳版といった趣のバタイユの遺作。訳が過度に学術的(要は下手くそ。勉強はできるけど日本語はできない大学院生が書いたみたいな文章)で、読み進めるにつれだんだんと熱量が下がっていった。いつか読んだ何かの本で、三島由紀夫が「バタイユの訳にはお粗末なものが多い」と書いていたのを思い出す。でも絵がたくさんあって楽しかったです()。2023/11/24