ちくま学芸文庫<br> 永遠の歴史

ちくま学芸文庫
永遠の歴史

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 212p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480086259
  • NDC分類 964
  • Cコード C0110

内容説明

時と永遠、比喩と象徴、主題と変奏、それは「原型とその反映」であり、また「一と多」でもある。永遠、象徴、主題は原型であり、一である。時と比喩と変奏は原型の反映であり、一の多様な形象である。永遠に対する時間の世界、一語に対する多語の世界を探求し造形することこそが、人間的な営為の本源にほかならない。20世紀の世界文学に屹立する鬼才ボルヘスの文学・思想の根源を示す、珠玉の哲学的エッセイ集。

目次

永遠の歴史
ケニング
隠喩
循環説
円環的時間
『千夜一夜』の翻訳者たち
覚え書二篇

著者等紹介

ボルヘス,ホルヘ・ルイス[Borges,Jorge Luis]
1899-1986年。アルゼンチンの小説家、詩人、批評家。ブエノス・アイレスで生まれる。早くから作家を志し、第一次大戦前後、ヨーロッパ各地に滞在し、当時の前衛的思潮であった超絶主義の一員となる。1921年帰国して旺盛な作家活動に入る。短篇小説集に『伝奇集』『不死の人(アレフ)』『ブロディーの報告書』、『砂の本』、詩集に『他者と自身』『暗号』、評論集に『論議』『続審問』など多数

土岐恒二[トキコウジ]
1935年生まれ。東京都立大学大学院修士課程修了。英文学専攻。都立大学教授を経て、現在、文化女子大学教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

たーぼー

45
気の遠くなる歴史の流れの中では、ちっぽけな現在なんて瞬時に去ってゆく虚無に過ぎないのだろう。その隙間に人の永遠に対する憧れやノスタルジアの介入する余地があることを研究者、哲学者達は見逃さなかった。ボルヘスはさらに、ここに奇譚めいた興趣を添えることにより、独自の世界を繰り広げて魅せてくれる。この妙技には流石の言葉しか出ない。彼の図書館的頭脳、検索力、そしてケニングの暗喩を一つ一つ書きとめる執念には震撼すらおぼえる。そして、それは彼の創作活動において言語たちと浮遊的に戯れるボルヘスの姿そのものでもあるのだ。2017/03/29

マウリツィウス

22
【ボルヘスと永遠回帰と円環の主題】ボルヘスにおける「約束の時代」、あるいは悠久の時代にして不朽の時代、無限の書物と円環の書物、『砂の本』、そして『夢の本』、またあるいは『砂上の書物』とも訳せる「古代地平に浮かぶあの羅針盤にして継続される生命を束ねた記憶の書物」つまり古代における旧き契約と新しき契約、ボルヘスの円環と無限と融和、何もかもが組込まれている。/「私の求めたこと、それは無限迷宮の無限遍歴、そして月と太陽、狼と猛る声、朽ち果てた言葉、幻影の蜃気楼、聳える山の向こうにある懐かしい時代と展開の始まりを」2014/08/28

白義

14
ボルヘスのエッセイは小説を理解するための補助線ではなく、彼の作品には全てに共通する常数がある、という解説を頼りに読むと、確かに永遠という概念自体の歴史を考察して自分の永遠観を吐露する表題作も、ニーチェの永劫回帰への真面目な反論も千夜一夜物語の翻訳者たちの紹介も、全てがボルヘスの小説に近い読後感を与えることに気付く。人が生み出した言語文化への拘泥、永遠という語から喚起されるイメージを最大限に引き出す途方もなさ……小説で言えばエルアレフや不死の人あたりが近いが、それを虚構を少なくした評論でも出せるのは人外技だ2020/12/16

∃.狂茶党

12
エッセイあるいは論考のようなものをまとめる。 ようなものというのは、存在しない書物についての評であり、短編集に収録された小説も含むからである。 ボルヘス作品は良く迷宮に例えられる。しかしこの迷宮は光に照らされ煌めいている。 鏡張りの迷宮である。 ボルヘスは鏡の迷宮を照らす光。 同一作品であっても、翻訳や、何に収録されているかで、意味合いが異なってくる。 鏡の迷宮はカットされた宝石に似たものだろう。2022/03/02

roughfractus02

10
著者が比喩や象徴として時間を捉えるのは、過去-現在-未来を直線上に加算的に配置する歴史の時間が解釈に過ぎない、と考えるからである。著者は歴史を地図に変え、時間を批判するプラトンのイデアからニーチェの永遠回帰までの説に永遠という印をつけ、コメントを付す。すると『千夜一夜物語』の千は単なる数ではなく、数えきれない=無限であることが理解される。千夜一夜は無限に一を足す不可能な試みであり、比喩や象徴のように相関性を示す解釈なのだ。こうして、過去と未来の束縛から解放された現在は、ネットワークに開かれたハブに変わる。2020/02/28

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/486535
  • ご注意事項

最近チェックした商品