内容説明
文豪ゲーテは多くの貌をもつ。その文業とともに、終生情熱を傾けたのが、植物学・動物学・地質学・解剖学・気象学などに及ぶ広汎な自然研究であった。とりわけ形態学と色彩論はその白眉と言うべく、シュタイナーらの再評価を経て、現代的関心もきわめて高い。分析と還元を旨とする近代科学の方法に対して、綜合と全体化を目指すゲーテの理念の背景には、汎知学‐ヘルメス学の伝統が控えている。『色彩論』の精髄たる「教示編」に加え、「科学方法論」を併載し、ゲーテ自然思想へのチチェローネとなす。
目次
科学方法論(近代哲学の影響;直観的判断力;省察と忍従;形成衝動;種々の問題;適切な一語による著しい促進;客観と主観の仲介者としての実験;経験と科学;分析と綜合;自然哲学;自然―断章;箴言的論文『自然』への注釈)
色彩論―教示編(色彩論草案;序論;生理的色彩;物理的色彩;化学的色彩;内的関連の外観;隣接諸領域との関係;色彩の感覚的精神作用)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんすけ
16
久しぶりに本棚を整理してたら懐かしい本が数冊出てきた。 20年ほど前に読んだ本だけど、ゲーテの勘違いに笑わされた。 よっぽどニュートンが憎たらしかったんだろうね。 でもゲーテ君。君の色彩は心の色彩なんだよ。 それに気づかないのも君が優しかったからだろうね。 ロッテに振られちまった君だけど。2022/07/14
NагΑ Насy
5
W.ターナーがこのゲーテの色彩論をもとにひかりの描写をしたと去年だったかのターナー回顧展(たしか上野)の展示解説のパネルで読んだような記憶がある。プリズムで分光する物理的な光学の色彩ではなく、人間の感覚にとって色彩はどのような意味があるのかというのが底流にあるテーゼとして、絶えず自らに問いかけながらゲーテは色彩を研究していたのだろうなと呼んでいて感じた。2014/08/01
U2
3
飛ばし読み。物理学・生理学的なヴァリディティについては分からないが、古代ギリシアに退行するかに見える闇の積極性をはじめ個々の議論はほとんど現代の科学者にはプリミティヴに映るのだろう。しかしニュートンが光を不変な物理法則・数式の世界において“客観的”に記述し色彩そのものについてはあまり顧慮しなかったのに対し、我々の眼前に現れる色彩自体を注視し主観と客観の相互作用を強調するのがゲーテの基本的なアティテュードであったとすれば、それはむしろ1世紀先の常識にある意味で通底するものだったと言えなくもないのではないか。2021/05/09
氷柱
3
679作目。3月10日から。偉大なる小説家による色について述べられた作品。具体的過ぎて一度では覚えられないので手元に置いて教科書的な読み方をするのが理想だ。今から250年以上前にこのような色彩に関する理論を体系的にまとめていたことが驚きだし、そもそもこの論を学者ではなく一小説家が残していることにも感銘を受ける。作者の多才さにも度肝を抜かれる。医学・物理・芸術の知識と感性が磨かれていなければここまでのものを書き上げることは決してできない。2021/03/18
moi
1
カントの美的判断における主観的合目的性と、ゲーテの生理的色彩の関係。共同研究の勧め。視覚優位。2021/04/11