内容説明
漢字・仮名まじり文を初めて手にした日本人は、それを用いて何を表現しえたのだろうか?平安朝における文章史の流れは、“書く”ための文体を最初に意識化した『竹取物語』にはじまり、連体修飾のつみ重ねと複雑な接続語によって人物の内面の重層を表現し頂点を極めた『源氏物語』、源氏的表現の超克に向かった『大鏡』に至る。史上ひときわすぐれた達成をみたこの時代の文学を読み解き、再現不可能的に実現しえた言語事実の発見につとめた、国語学の碩学による問題作。
目次
第1章 平安文章の創造―勢語の章(かな文の出で来はじめ―竹取物語;いちはやき到達―伊勢物語;晴のかな文―古今集仮名序 ほか)
第2章 平安文章の成熟―源語の章(当事者的表現―蜻蛉日記;物語への歩み―和泉式部日記;一般化の筆―枕草子 ほか)
第3章 平安文章の終結―大鏡の章(同定の論理―更級日記;平安への訣別―大鏡)