内容説明
1986年、M・エリアーデの死によって、大著『世界宗教史』は未完の書として残された。その愛弟子であり学問的後継者であったヨアン・P・クリアーヌは、エリアーデから最終巻の編集を依頼され、師の精神と構想に基づいてまとめる作業を行ったが、中途、彼もまた不慮の死を遂げてしまう。最終刊のドイツ語原本の版元ヘルダー社は、エリアーデ、クリアーヌの意を受け、著名な宗教学者や民族学者の協力を得てそれを完成させた。これにより、既刊分では論じられなかった諸地域がカバーされることとなった。文庫版第8巻は、西・中央アフリカ、南米インディオ、北米オグララ・スー族、日本の神道、啓蒙主義以降のヨーロッパなど各地の宗教。全8巻完結。
目次
第45章 家族共同体と宇宙の諸力―西アフリカの宗教における宗教的根本思想
第46章 中央アフリカ東部における宗教的概念の諸相
第47章 シャーマニズムと死者の国への旅―南米低地インディオの宗教的表象
第48章 サン・ダンス―北アメリカのオグララ・スー族における宗教的世界像と儀礼
第49章 神道と民俗宗教―日本の宗教の歴史的展開
第50章 日本の民衆宗教―日本宗教の統合的理解のために
最終章 啓蒙主義以降のヨーロッパにおける宗教的創造性と世俗化
著者等紹介
木塚隆志[キズカタカシ]
1961年生まれ。駿河台大学助教授
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感想・レビュー
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優希
44
大作ですね。著者と弟子たちが命を削るように紡がれた宗教の歴史。学びは常に絶え間なく、興味を失うこともありませんでした。心地良い疲労感に満たされています。2022/12/12
塩崎ツトム
10
エリアーデ死後、ドイツの出版社の呼びかけによって作成された最終4巻は大航海時代の後の植民地支配(実質大虐殺である)により根絶あるいは衰退した新大陸の諸宗教と特異な位置に収まる日本宗教の今昔について。そして啓蒙の時代から資本主義の普及による宗教的権威の失墜と、社会主義の失敗。そして資本主義だけが残った現在、宗教は来世の幸福を信者に見せられなくなり、アメリカ福音主義は現世において富めるものこそ天国の門は開かれていると信者に説く。神性なき時代のわたしたちは、希望を見出すことはできるのか?2025/04/12
roughfractus02
6
著者の原案を基に後継の学者達が本巻を執筆する過程は、著者が挙げた3つの営為からなる宗教の本質を垣間見せる。脱魂体験で宇宙を外から把握する「創造」、この体験に始まる異教同士を出会わせる「総合」、その伝達が声から文字に変換されて活発化する「解釈」が、本巻の原動力だからだ。本巻はこれら営為を、アフリカ大陸のシャーマニズムの創造に見、高地から低地の異教が出会う南米低地を辿り、大陸の仏教や道教が解釈されて独自の発展をする日本の神道と仏教に及ぶ。人間と意識が中心となる啓蒙主義以降の西洋では宗教性は無意識に保存される。2021/07/07
Copper Kettle
4
昨年10月から読み始めてようやく読了。この最終巻では日本の宗教について触れていて、なかなか興味深かったし、なるほどと思わされる箇所もあった。最終章の世俗化されていく西欧社会における宗教の位置付けのような内容ははっきり言って難し過ぎた。が、なんとか理解したいと思う、再読も今はしんどいが。20年後か? 宗教は人類による最大の発明であることは間違いない、いろいろと問題点ばかりが指摘される昨今だけど、古代や中世の人たちが当時どう考えていたかを知るには宗教史も知らないといけないし、頭から宗教を否定するのも違うよね。2023/04/27
冬至楼均
0
外国人から見た神道の解説などはなかなかに興味深いです。2011/10/30