内容説明
ドゥルーズの哲学のすべてがその初期のヒューム論のなかにある。それはドゥルーズの哲学のアルファにしてオメガである。『経験論と主体性』と並ぶドゥルーズのヒューム論考でありながらも.これまで一度も読者の前にその姿を現すことのなかった幻の共著の邦訳ここになる。ドゥルーズの独特なヒューム読解の精髄を示すとともに.想像力とは何か.情念とは何か.仁愛とは何か.正義・公正とは何か.徳とは何かといった.ドゥルーズの思考の最も奥深き動因をも鮮やかに呈示する。今後の新たなドゥルーズ理解にとっての必読の書である。
目次
第1章 ヒュームの人生
第2章 哲学
第3章 業績
第4章 業績補遺
ヒューム抜粋集
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
18
共感は穏やかで一般的な諸原理すべてとつねに適合する。理性に対してもつねに等しく権威を有し、判断や意見を司る(126頁)。想像力には数々の情念の働きが属している(128頁)。アダム・スミスの『道徳感情論』に連なる箇所かもしれない。2020/09/05
シッダ@涅槃
18
(読了)第一声は読んでくたびれた。思想書に慣れてないものはこうなるのだろうか。ヒュームは「カントに負けた哲学者」という印象を勝手に持っていて、ドゥルーズによる「屑拾い」(ベンヤミン)的書物かとおもっていたが、「抜粋」にメルロ=ポンティを思わせることが書いてあったり、解説(長い!)にもあるように現代思想(現象学など)に多大な影響を与えたひとだとわかった。繰り返す、くたびれた。2016/07/18
月をみるもの
10
経験と習慣を離れて、なにかを判断したり認知することは可能なのだろうか。本能ですら、世代を超えて刷り込まれた経験の産物であるわけだし。 2019/03/30
空箱零士
9
認識とは「経験論的(後天的)」なのか? それとも「超越論的(先天的)」なのか? 本書自体はヒュームの業績紹介および抜粋集だが、本番は訳者による解説だろう。解説の論旨は、(訳者による推定だが)前半(第一章・第二章)のクレソンパートと後半(抜粋集の選定も含めた第三章以降)のドゥルーズパートの差異と、『経験論と主体性』等を踏まえた、ドゥルーズによるヒュームの認識論理解の解説及び、それを踏まえた訳者による正義論の試論。やはり難解だが、内容自体は「経験論」と「超越論」の狭間に揺れる「正義」の在りかの探求と、普遍的。2017/11/21
Z
8
の源泉である。しかし拡大された偏向には2つの欠点がある。一つは同じ国籍の人より家族や恋人のほうを重視するように、関係性が遠いほど情念の度合いが低下すること。一つはその範囲、対象の問題である。初めの欠点を解決するのが正義の感情で統治の問題であるとする。ヒュームは制度の問題を禁止というより信頼の拡大の問題として捉えた初期の人間である。二つ目の問題は想像力の問題である。イメージは事実ではない。もし物語から我々にとって素晴らしい人物を悪と思ったり、悪をもたらす人を善ととらえたらどうするか。想像力は文化を生み出すが2018/03/12