内容説明
ヨーロッパのキリスト教徒や知識人たちにもっとも広く読まれてきた『ユダヤ古代誌』。天地創造から説き起こし、紀元後66年のユダヤ戦争直前までの記述で終わる全20巻は、ヨセフスが敗軍の指揮官のひとりとしてローマに降ったのち、皇帝の厚遇のもとに書かれた。政治的には親ローマ派であり、思想的にはユダヤ教、ユダヤ文化の弁護者であったヨセフスの大著は、ユダヤ史を知るうえできわめて貴重な史料であるばかりでなく、イエスと同時代の散逸した記述を数多く含む文献として、キリスト教徒たちの関心をひきつけてきた。原著1~4巻までを収める文庫版第1巻は、天地創造からアブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフをへてモーセの事蹟に言及する。
目次
天地と人間の創造
人類の堕落/神の処罰と和解
アブラハム物語
イサクとヤコブ物語
ヨセフ物語
エジプトでのイスラエル人とモーセの誕生
エジプトがこうむった九つの災禍
出エジプトと紅海の奇蹟
シナイ山への行進と到着
シナイ山での出来事―十戒の授与〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
4
親ローマ帝国派のユダヤ人の知識人による、さしずめ聖書リミックスバージョン。聖典なので、文章に手を入れられない聖書とは異なり、ユダヤ民族の歴史をローマ人やギリシャ人にも理解させようという主旨の編集なので、著者による注釈や補足が入ったり、時系列が整理されていて、とてもわかりやすい。この一巻は天地創造からモーセの死までが範囲だが、モーセ以前は血縁関係で繋がる氏族のファミリー・ヒストリーなのに、モーセ以後は多民族と興亡する「ヘブライ人史」になるのが特徴。とにかく、氏族の頃から骨肉の争いが続き、結構ドロドロしている2022/11/12
ラウリスタ~
4
聖書の解釈(しかもユダヤ人で一世紀の)として西洋社会で大きなウェイトを持っている本。十戒が割られるシーンとか金の子牛を祭るシーンとかがないなと思ったら、あえて語らない聖書の物語もあるらしい、消したい過去なんだろう。ヤコブまでの時代ってとにかく子作りの歴史だな。カナン人は必ず皆殺ししろとか旧約の神は恐ろしい。アブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフの流れで実はイサクは何もしていないことに気づいてしまった・・・。人物によって書き込まれかたの濃淡が今までのイメージと若干違った。2010/12/06
刳森伸一
3
ユダヤの歴史を他の民族に対して提示することを目的としているため、旧約聖書よりもはるかに分かりやすい。一巻目は、天地創造からモーセの死までだが、その中は様々なエピソードで彩られている。もちろん主に神と人との「対話」が語られるのだが、心打つのはヨセフの心情だったりする。2015/10/04
スミレ雲
2
【図書館本】主語が補足されていたり、微妙な補足があったりで、とても分かりやすかった。なんとなく断片的に知っていた知識がストーリーになった気がする。でも、登場人物多すぎで、混乱もした。西洋美術を見に行くときにも参考になると思う。2017/09/16
至
0
図書館で最後に貸りた本十戒を割る件はない2017/03/15