内容説明
文学という制度に転化する近代小説のリアリズム的主流に対して、探偵小説や伝奇小説など近代的な物語は、自己増殖・自壊を戦略的にはらみ、虚無の彼方に自己解消してしまう装置を内蔵している。この点でまさにウロボロス的といえるのである。夢野久作、小栗虫太郎、国枝史郎、中井英夫から大江健三郎、村上春樹まで、それぞれの作品に鋭く分け入り、その自壊する戦略の意味と深度を問うとともに、ポストモダンの物語批判や文学論を徹底して批判するラディカルな文学論。
目次
序章 物語あるいは自壊する形式―大江健三郎論
第1章 観念と循環する意識―夢野久作論
第2章 顕現する象徴とその消滅―久生十蘭論
第3章 密室という外部装置―江戸川乱歩論
第4章 物語の迷宮・迷宮の物語―小栗虫太郎論
第5章 完全犯罪としての作品―中井英夫論
第6章 伝奇と壊れた物語―国枝史郎論
第7章 欲望と不可視の権力―半村良論
第8章 世紀末都市と超越感覚―稲垣足穂論
第9章 都市感覚という隠蔽―村上春樹論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Yuji
4
推理小説をここまで真面目に文芸評論の対象として捉える人はいません。しかし、ここでの大江健三郎と村上春樹氏の評論は、率直で、当たってると感じました。2013/09/23
急性人間病
2
自己増殖する物語を観念として制度/権力化する二元論(二項対立)と、それを外側から括弧付の「二元論」としてしか批判しえない言論を回避し、物語の内側から爆弾を起動させるには?という問題提起が、いくら解体しても生えてくる観念と一緒に生きるしかない立場にとってこれ以上なく刺激的な試みとして、“黒い水脈”に、伝奇小説に、大江・三島・春樹らの現代文学史に膾炙してゆき、『すべての二元論は隠蔽された三元論である』という命題が示す“3つ目”を求めての聖杯探索へこちらを誘う。宝探ししたいぜ、宝探ししたいぜ、球体の外側で。2022/11/10
Jimmy
2
通勤の電車の中で毎日ちょっとずつ読み進めたら意外と腹に落ちる話が多くてここまで積ん読にしていたのが可哀想になったぐらい面白かったです。特に小栗虫太郎論は不思議に小難しくもなくスッと入ってきましたし、知らない作家の国枝史郎論は本題に入る前の怨霊の考察が本当にめっけもんの得しました。2017/11/07
nukuteomika
2
近代を相対化する文学としての伝奇小説論。ほとんど論じられることのない作家ばかりで興味深い。個人的には笠井のベスト作品になりそう2009/12/17
いちはじめ
2
大江健三郎、夢野久作、久生十蘭、江戸川乱歩、小栗虫太郎、中井英夫、国枝史郎、半村良、稲垣足穂、村上春樹を論ずる。どういう人選なのか、判るような判らないような……1999/09/11




