内容説明
取っ手や橋・扉など、見慣れた風景の細部からモデルネの本質を読み解き、貨幣、大都市、女性、モードにいたるまで、現代社会のあらゆる事象に哲学的思索を向けた「エッセーの思想家」ジンメル―その20世紀的思考を生き生きと伝える、新編・新訳のアンソロジー。
目次
愛の哲学断章
女性心理学の試み
現在と将来における売春についての覚え書き
女性と旅行
いかなる意味でも文学者ではなく
取っ手
橋と扉
ヴェネツィア
額縁―ひとつの美学的試み
肖像画の美学〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ex libris 毒餃子
11
芸術論が知りたくて読みました。女性論や貨幣論も面白かった。2022/01/06
内緒です
11
1900年代の初めに書かれた作品なのに面白く、的を射た作品。勉強になりました。2015/11/29
うえ
9
「ランプレヒトがその『ドイツ史』のなかで語っているところによれば、中世のある種の騎士団は、時とともにその実用的=実務的な目的を失っていったが、その後も娯楽を目的とするたんなる社交上の団体としては存続したという。ここで指摘されているのは、さまざまな分野で同じように生じた社会学的発展のひとつの類型だ…社交上の娯楽は、少なくとも副産物として、あらゆる団体形成にたえずつきまとっている。それは、様々な利益集団の接点としての役割を果たしており…団体が実質的な存在理由や魅力を失ったあとでも、人を束ねる力として生き残る」2019/06/05
うえ
7
「社会主義者は、社会主義によって、私たちに与えられる快楽と苦悩の平均値が変化することはないと確信している…平等の理想に比べれば…文化財はもとより、幸福自体の総量も瑣末な問題となる…社会主義は、人間には幸福と倫理性を求める本性がそなわっている、という前提に立たざるをえない…この二つのものから離反するのはひとえに歴史的情況の錯綜と不合理によるものだ、ということになる…社会主義は倫理的オプティミズムを必要としている…目標点についても、社会主義はあらゆる革命主義や千年至福説と同様、オプティミスティックだ」2016/03/14
ぷほは
6
「女性と流行」のみ再読。よく扱われるジンメルの流行論といえば「個性化と模倣の両価性」と「トリクルダウン説」という論点以外にも、多くの論点が提示されていることを確認。たとえば女性の社会的立場が14~5世紀においてはイタリアでは高くドイツでは低かったため、流行への無頓着さと敏感さが異なっていた、という抑圧と良風美俗への距離の議論。また花柳界のパーリア性と流行の最先端性の関連の議論。両価性ではなく非対称性、滴下ではなく浮上(バブルアップ)の側面。これらがさらっと書かれているので読み逃してしまうのも無理はないか。2022/03/24