出版社内容情報
ニネベ出土の粘土書板に初期楔形文字で記された英雄ギルガメシュの波乱万丈の物語。「イシュタルの冥界下り」を併録。最古の文学の初の邦訳。
内容説明
初期楔形文字で記されたシュメールの断片的な神話に登場する実在の王ギルガメシュの波乱万丈の物語。分身エンキドゥとの友情、杉の森の怪物フンババ退治、永遠の生命をめぐる冒険、大洪水などのエピソードを含み持ち、他の神話との関係も論じられている最古の世界文学。本叙事詩はシュメールの断片的な物語をアッカド語で編集しアッシリア語で記されたニネベ語版のうち現存する2000行により知られている。文庫化に伴い「イシュタルの冥界下り」等を併録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
神太郎
57
多分、手に取ったのは10年くらい前。今まで寝かせてました。最古の物語という事で、神話とか好きならば読まないとと思い読む。欠損が多いのですが、訳者が多くの版を元に物語の筋が通るように構成し直してるので一貫性があり、読みやすい。大洪水の所は「ノアの方舟」を想起させるし、合わせて収録されている「イシュタルの冥界下り」は他の神話にもある冥界への冒険との類似も見られ実に興味深い。こうみると神話の類似性と見られ、これについては解説(このボリュームにも熱意を感じる)にて多いに語られてるのでそちらも是非一読を。→2020/05/16
アナーキー靴下
55
世界最古の文学。本書の半分程もある解説は、考古学的見地やシュメールの文化的背景、旧約聖書と照らし合わせながらの時代考証及び地誌と、真摯かつ盛り沢山で、叙事詩のところどころの欠落さえもが価値あるように見えてくる。この物語に心を打たれるのは、人間の社会性を神話にしたものと思うからだが、鑑みて、ここでの死への恐怖は動物的本能ではなく社会性ゆえと思う。築き上げたものの喪失と同時に繋ぐ者がいることに、湧き上がる両価的な強い感情。人類最古の文明が、初めてその心の震えに気づいたかのように、まっすぐ伝えてくれるのだ。2024/08/17
みっぴー
52
世界最古の叙事詩、ギルガメシュ叙事詩。書かれたのは四千か五千年前だとか…!石板に書かれた楔型文字をこうして日本語で読めるなんて、奇跡に近いことだと思います。しかも内容、面白いです。ギルガメシュとエンキドゥのフンババ退治や、イシュタルの逆ギレ、そしてなんと旧約聖書の『創世記』にある大洪水と酷似したエピソードが。今のイラク、イランにあたる地方から出土したことで、発表時はセンセーショナルを巻き起こしたそう。うーんロマンだ…。いつか欠損部分が発見され、完成形を読める日が来ることを願います。2016/10/27
絹恵
39
神と人間の血を持つ粗暴な王ギルガメシュにその半身として野人エンキドゥが作られ、彼らは出逢い、友情が芽生えます。審判者シャマシュもギルガメシュの理解者ではあったかもしれないけれど、エンキドゥとの関係の方が対等/平等だと言えます。だからこそ、夢から浮かび上がるのは神と人間という交わることのない生と死を描いているようだと思いました。これはそんな世界で一番最初に生まれた永遠の物語。 2017/08/29
TSUBASA
37
古代オリエントの暴君ギルガメシュを語った叙事詩。その原本は楔形文字で書かれた11の書板から成り、半数近くが欠落している。その欠落部を補いながらも全体の意味が通るよう訳出したのが本書。叙事詩本編は100p程度で、残りの150pは翻訳に関する論説などであり、物語あるいは民俗学の要素は少ない。しかし4000年以上前の物語が今にも通ずる体を成していたというのは人間の創作性は古代から変わらないのかなとか思った。2019/09/15