ちくま学芸文庫<br> 望郷と海

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ちくま学芸文庫
望郷と海

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  • サイズ 文庫判/ページ数 344p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480083593
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0195

内容説明

1945年、ハルピンでソ連軍に抑留された著者は、1953年に特赦で日本に帰還するまでの8年間、シベリア各地のラーゲリを転々とした。極寒の地での激しい強制労働、栄養失調、それに同じ囚人の密告などなど。帰還後、著者は自己の経験をすこしずつ詩に、そして散文に書きとめる。まさにそれは、その経験を語りうる統覚と主体の再構成を意味していた。本書は、「告発せず」を貫きながら,何より厳しく自己の精神と魂のありようを見つめつづけた稀有の記録である。

目次

確認されない死のなかで
ある「共生」の経験から
ペシミストの勇気について
オギーダ
沈黙と失語
強制された日常から
終りの未知
望郷と海
弱者の正義
沈黙するための言葉
不思議な場面で立ちどまること
『邂逅』について〔ほか〕

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Yuko

8
8月にはなにか一冊戦争に纏わる本を読もうと思っているが、これは7月から取り掛かったにも関わらずなかなか進まなかった。シベリアで25年の判決を受け日本に帰ることを諦めていた著者が戦後8年間の抑留を経て帰国。親族や同朋から受けた仕打ちが抑留中の過酷な経験に重なり、精神的にも肉体的にも苦しみから完全に逃れることのなかった人生。シベリアでの想像を絶する体験のみならず帰国後の日記や家族に向けた書簡に言葉を失った。2018/08/06

いりちゃん

2
シベリアでの過酷な抑留生活、旧ソビエトの非人道的な対応、祖父がシベリアで戦死したとの事であるが著者と同じ様な抑留生活を送らなかったのならと思う。過酷な生活から滲み出た著者の死生観から何を学べば良いのか考えなければならない。2021/06/29

のりたま

1
歌会で紹介された本。シベリア抑留の話題になると、もし自分の家族がそんな目に遭ったら再会を信じて頑張ってほしいと思っていたが、本書を読み進むにつれ、そういう考えがどれほど甘いものかを思い知らされた。久々の、強烈な、衝撃的な読書体験だった。「肉親へあてた手紙」はその体験の答え合わせのようだと思いながら読んだ。もし自分が母親でこの手紙を受け取ったら、一人の人間として厳然と受け入れるしかないが、ほとんどの抑留経験者は作者のように言葉にできなかったのではないか。理解できない家族との間で多くの悲劇があったのだろう。2022/08/28

こうすけ

0
シベリア抑留を体験した筆者の心境が生生しく伝わる。進化"論"だけを知る我々は環境に適応できるものだけが生き残ると叩けるが、つまり適応できなかったものは死ぬということを忘れている。適応するという意思をなくすことも適応できないことに含まれる。そしてどんなに過酷な状況でも適応できれば苦悩は小さく、むしろ好転とはいえ状況の変化の方が苦悩は大きい。2023/11/12

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