内容説明
売春の歴史とはすなわち、社会における女性の地位と性の変遷であり、男女の関係の歴史でもある。かつて体系的にとらえられることのなかったこの「売春」というテーマに光をあて、さまざまなジャンルの資料を豊富に駆使して浮き彫りにする、初の本格的な世界通史。図版多数掲載。本書では、第一章「売春の起源」から第八章「宗教改革と梅毒」までを収録。
目次
売春の起源
古代オリエント―聖と俗
ギリシア人―ポルノグラフィーと性への怖れ
ローマ人―アンビヴァレントな感情
キリスト教、イスラム教と性道徳
インド、中国―もうひとつの見方
中世ヨーロッパ
宗教改革と梅毒
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
氷柱
4
1125作目。12月23日から。中世までの売春を通じた歴史観について述べられている。概ね現代と同様の仕組みで行われていたようだが、細部に目をやると意味合いが異なる場合もあったようだ。但し内容が内容だけに資料が乏しく詳しい部分については未知の領域となっている。といいつつ終盤は注釈のオンパレードなので文献の数が不足しているというわけではない模様。2024/12/29
でろり~ん
2
ふううん。しかしまあ、売春についての資料がこんなに山ほどあるってことに驚くですねえ。でも生活のために売春する女性の数が凄く多くなって、買春側の男性が結婚しているとすると、断然、あぶれちゃう男が増えるってことで、そりゃ物騒でもあったでしょねえ。ダブルスタンダードだって盛んに言ってますけど、中世までの時代の考え方に当てはまるんでしょかねえ。説得力はあまり感じませんでした。下巻にオチがあるんでしょか。2024/10/28
xxx
2
上巻は16世紀宗教改革まで 女性が社会的活動から隔絶されていること、女性に性的純血を遵守させる一方で男性には性的放埒が許される、または推奨させるという二重規範が売春を生み出す要因となる。そうした状況下で古代オリエントから売春が存在していることから、世界史のほとんどが男性優位で作られてきたことがわかる。 以下それぞれの章についてまとめる2019/04/11
吉倉槇一
2
著者のバーンとボニーはともにアメリカの社会学者。本書は売春をめぐる議論のための基礎資料として書かれ、一般的な通史の形でまとめられている。西欧の事例が主だが、インド・中国にも一章をあて、時代区分としても原始社会、古代、中世、近世、近代と幅広く取り上げている。 彼らはまずブロッホの見解を踏まえ、売春を「淫蕩であることを特徴とする婚外性交渉」と規定する。そこから絶対王政下に活躍した王族の愛妾達も売春婦とする見方が可能になり、本書の基本的な視野が定められる。2013/02/04
紫暗
2
中世ヨーロッパの売春について調べるため、ついでに古代から読んでみました。ここまででわかったことは、とにかく売春という行為、観念、どちらも宗教から切り離すことができないということでした。こんなにも宗教が売春を肯定するにしろ否定するにしろ大きくかかわっているとは思わなかったので、発見の多い一冊でした。更に、売春の歴史は女性蔑視の歴史にも関係しているのだなと改めて認識しました。多少著者の書き方が偏っている気がしないでもありませんが、売春に正面から取り組んだ貴重な資料だと思います。2012/09/12