内容説明
「書くこと」と「生きること」とが独自の緊密な統一体を作っているカフカの文学。それゆえに、作品を読むことが、必然的にカフカの生の探究へと私たちを誘うのだろう。幼年・青年時代に決定的な影響をあたえた「父親」の意味、対父親関係の延長としての外界との関係、プラハという独特な都市の環境、とりわけ、公用語でありながらその貧しさを露呈するプラハ・ドイツ語の位置づけ、カフカにとって1912年という年のもつ決定的な意義…親友マックス・ブロートの手になる唯一の伝記の空白を埋め、渉猟の限りを尽くしてカフカ文学の原郷に迫る。
目次
幼年時代、両親の家、小学校
高等学校(1893―1901年)
世紀の転換期のプラハ
大学と司法修習生時代(1901―1907年)
就職した初めの数年(1907―1912年)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンタマリア
47
理系だが大学ですこしだけ文学をかじった。夏目漱石の夢十夜を彼の体験から読み解くといった講義だった。なので僕と文学との付き合い方は、その作家の人生との向き合うことだ。この本はカフカの伝記的なものだ。ピッタリだと思った。理解するにあたっての基本知識はほとんど無いし、それが理解度に繋がってしまった。まぁ読んでて楽しかったしオッケー👌ただ引用が多いし、言葉遣いが古いしでよみにくかった。2021/03/11
Tonex
5
マックス・ブロートのカフカ伝の杜撰さ・恣意性に憤った無名の一学徒が、呆れるほどおびただしい渉猟・訪問・参照・見聞の末、偏執的に書き上げたカフカ研究の古典(らしい)。訳者によれば、これは人が一生に一度しか書けないような本であって、著者にこれ以後大きな著述が無いのは、全精力が本書において蕩尽されたためではないかとのこと。▼執筆当時の著者は専門の研究者ではなく出版社の社員で、仕事のかたわら大学に通い、カフカ全集の編集に加わったことを機縁に書き上げた博士論文が本書。その後著者は自ら出版社を営み、編集者として活躍。2015/12/25
こぽん
1
カフカの読んだ本を私も読みたい。そうしたら彼と同じ視線に立てるような気がする。2010/05/20