内容説明
青年と青年期は、現行のシステムに対して秩序維持的に機能するだけでなく、システムそのものの廃棄に向かうこともある。1970年代は「やさしさ」が、そのような対抗価値として共有された時代だった。青年現象としての「やさしさ」の両義性を、アンデンティティやモラトリアムなどの概念を補助線として読み解き、「ミリタントなやさしさ」に高度産業社会からの自立を託した政治のフォークロア。
目次
1 未成の存在証明
2 青年の虚無
3 青年のなかの老い
4 青年が歩く
5 〈場〉と〈ふるさと〉への回流
6 モラトリアムのなかの青年
7 やさしさのゆくえ
8 青年の「保守化」9 共に生きる力のために
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まつゆう
1
一昔以上前に書かれたとはいえ、今でも通用する若者論。難解で生真面目な文章が時たま見られるが、未だに大学にしがみついてモラトリアムを享受しているような自分を含む、若者の可能性についてとても「優しく」肯定している。ただ現代はアイデンティティの未決定化がより低年齢層にまで広がり、また、一見表層的には統合(今だったらやはりネットだろうか)をしてる一方、その一人ひとりの孤絶の度合いは深まっているようにも思える。それは筆者が否定した「モード」であるはずだが…。2012/09/04
りいぶる
0
1994年刊の文庫版を古本屋で購入。850円のところ500円の値だったからいまなお需要があるのだろう。1981年に単行本が刊行されたこの本は、当時ブームだった青年論の白眉とされる。特徴ある青年の動向を拾い、社会経済の変化、家族を含む人間関係の変化などと結びつけて「モラトリアム」「アイデンティティ」をキーワードに青年層の社会意識を分析。「内面化されたモラトリアムは、生産力主義と商品化様式を超え出ようとする営みにも結び付く。」「管理はアイデンティティを求める潜勢力を回収しきれない。」青年への信頼がにじむ。 2019/05/12