内容説明
さまざまな社会の変遷のなかで、現代日本人の「心」のありようや、人と人とのかかわりはどのように変わったのだろうか。思いこみやイリュージョン、主観的な全能感を生きるエネルギーとし、ひたすら自己像に執着し続ける自己愛人間、すなわち我々の心理や性格を、実例をまじえながら明快に論じた精神分析学者の代表的論考。
目次
プロローグ 自己愛は誰にでもある
1 自己愛の心理―人間の根源的なもの
2 自己愛の構造―その成り立ちとみたし方
3 現代社会と自己愛人間―アイデンティティを失った時代
4 自己愛パーソナリティ―イリュージョンの中で暮らす人間
5 自己愛人間の生態―その対人関係
エピローグ 自己愛社会日本
自己愛理論セミナー
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
160
生の拠り所となる自己愛の満たし方がWW2後の集団幻想の喪失により大きく変わった。私たちの自己愛は他人の目を気にする小さな自己愛であり、一人一人が見えない自己愛のカプセルの中で暮らしているという。それは誰にもいえることだが、問題は全能感だろう。フロイトは全能感から覚めることを成熟としたけれど、著者はある種の全能感を健康の証だとする。81年の刊行時に比べて、情報化が飛躍的に進んだ今、シラケといわれたあの頃よりもパーソナルな自己愛の満たし方は複雑化し、格段に難しくなったように思う。健康な自己愛を保ってゆきたい。2026/05/17
香菜子(かなこ・Kanako)
14
自己愛人間。小此木啓吾先生の著書。健全な自己愛はとても大切な一方で、自己愛が必要以上に肥大してしまうと自己愛過剰の自己愛人間になってしまう。そんなの自己愛人間の定義や特徴、自己愛人間の精神構造、自己愛人間ができる背景などをわかりやすい言葉で丁寧に解説している良書。2018/07/29
kana
11
この本でキーワードとなるのが「自我理想」「理想自己」「自己愛的同一性」だろう。特に自我理想と理想自己の違いは重要で、前者は社会的規範を基準に「あるべき自分」像が描かれるが、後者は「こうありたい自分」が基準となるものであり、これが誇大化すると病的な自己愛になる。また、自我理想ではより大きな自己愛のために目先の自己愛を犠牲にすることができる。健全な自己愛の満たしかたは他者に理解・共感してもらうことにあるというのが作者の見解であり、自己愛は他人との関わりの中でしか解決できないところに人間の難しさを感じた。2021/10/11
塩崎ツトム
10
80年代~90年代のバブル世代・カタログ世代の社会による超自我を失った「自己愛人間」について分析した本であり、本書で語られる「若者」がその後の90年代以降の政財界の中核になっているという現実を鑑みるに、「失われた30年」とは、彼らの、ゆりかごの中の自己愛を満たすためだけに、徒に時間が消費された時代だったのではないか?この世代は社会に問題があるという現実を直視できない。(つづく)2022/03/26
ま
6
自己愛というフィルターを外して世界を見る時、人は幻滅する。しかしその幻滅こそが現実世界を生きるために大切である。 今は違うけど、初めて読んだ時は目の前の世界が壊れるんじゃないかってくらいの衝撃があった。 大学生の苦しい時代を救ってくれた大切な本。 2022/02/18




