内容説明
『源氏物語』をひとつの小説作品として自由に読みとくと、その世界はどのように立ち現れてくるのか。作品をつらぬく無意識としての〈自然〉、霊異に対する人々の心のありよう、また歴史物語『大鏡』や『栄花物語』とのトポロジカルな同型性に着目し、作品の構造と深層を浮き彫りにする創見と洞察にみちた画期的論考。
目次
第1部 母型論
第2部 異和論
第3部 厭離論
第4部 環界論
附録 わが『源氏』
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
16
『源氏物語』の解説本というよりも吉本隆明が『源氏物語』を通して文学をどう読むのかという本であり、あとがきに古典の学者に細かいところを突かれていたが、原典主義者でもなく、『源氏物語』を勧めるのなら手に入り安い与謝野晶子源氏が誤訳もあるがいいという。それは与謝野源氏が彼女の『源氏物語』を構築出来ているからだと思うのだ。例えばウェイリー版でも橋本治版でも『源氏物語』は文学として楽しめる。それは彼らの中に『源氏物語』という文学世界(空間)が構築出来ているからだ。それで吉本源氏はどんな世界だろうとかというと、2024/04/20
くり坊
1
実際に『源氏物語』を紐解く前に、この1冊を読んでおくと、より『源氏物語』というストーリーの世界に近づきやすくなるような気がした。今、本書の第一部「母型論」を読み進めているが、たいそう納得がゆく、作中のプロットについて、著者は触れているが、その洞察が的を得ていた。図書館で借りた本(ハードカバー)だったが、これなら「ちくま学芸文庫」で購入して、手元に置いておいてもよいな...と思った。2024/03/04
ダージリン
1
最近谷崎訳で源氏物語を読んだところで、興味深く読んだ。薫について多く割かれていたが、吉本氏が書いているように薫の何とも言えぬ報われなさや幸せになれない感じは読みながら強く印象に残ったところであった。吉本氏は与謝野晶子訳を推奨していたが、少し読んでみようかと思う。受けた印象は谷崎訳であるが故の部分もきっとあるのだろう。2015/05/09
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