出版社内容情報
幕府も倒幕派も、
競って英語を学び始める──
・伊藤博文(長州)…密航留学で攘夷から開国へ
・大隈重信(佐賀)…各国憲法を英語で読了
・榎本武揚(幕府)…多言語を操る国際通
福沢諭吉、勝海舟、西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允、坂本龍馬、森有礼、
徳川慶喜、ジョン万次郎、寺島宗則、渋沢栄一、夏目漱石……などが躍動!
江戸幕府を倒し、新しい「日本」の形を模索した明治維新。水面下では、言葉をめぐって「もう一つの闘い」が繰り広げられていた。迫りくる西洋列強と外国語で交渉できなければ植民地にされかねない。まともな教科書も辞書もない時代、サムライたちは必死に西洋語を学び、欧米に密航留学した。漢学、蘭学に加え、英語、独語、仏語が乱立する中、なぜ英語が新しい国家を創る原動力となりえたのか? 英語教育史の第一人者が、これまで語られてこなかった視点から幕末・明治に光を当てる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
43
E図書館新刊棚。書店で見つけていた一冊。S・スマイルズ『西国立志編』(1871)、福沢先生の『学問のすゝめ』、内田正雄『輿地誌略』は「明治の三書」で大ベストセラー(032頁)。福沢先生が大村益次郎に英書購読を共にやろうと声かけしたが、拒否られたという(068頁)。その福沢先生は英学者・英語教育者、西洋事情の伝道師(094頁)。子卿(しけい)『華英通語』の日本語訳、『増訂華英通語』で出版第一号。2025/05/24
ねこまんま LEVEL2
15
今や英語を学ぶツールは数多存在する中で、江戸から明治にかけての人々は確かな教科書もない中凄まじい熱意を持って英語を学んでいたのだろうか。外国語を習得しなければ列強の支配下に置かれてしまう、そういった強い危機感が日本を強くしたことは間違いない。歴史に学び自身も熱意を持って学びを深めていけたら良い。2025/06/28
田中峰和
5
外国語を学ばざるを得ないのは、国力の弱さと関係している。アフリカ諸国は多くがフランス語を使っている。産業や文化の発展は言語が寄与する部分が多い。抽象的な表現は、途上国の言語では困難だ。明治以降、多くの翻訳言語が生まれたのは元々、日本が取り入れていた漢語の影響が大きい。社会の変化を反映した語を挙げれば、汽車、汽船、鉄橋、電線、商法、民法、貿易、科学、数学、学歴、哲学などおびただしい数におよぶ。貿易のために商人に用いられたビジン・イングリッシュ。商業のビジネスがなまったものだ。どれほど通じたのか疑問だ。2025/06/05
Go Extreme
3
英語という黒船の衝撃 蒸気船と大砲装備の黒船 西洋標準たる万国公法 不平等条約治外法権と関税自主権 脱亜入欧思想の浸透 近代化による幕府延命策 蕃書調所から開成所への発展 辞書経由の西洋政治思想流入 陸軍仏語海軍英語の必修化 西洋兵学による倒幕軍形成 グラバー商会経由の武器輸入 明治十四年の政変と国家主義傾斜 不平等条約改正という挑戦 岩倉使節団と弱肉強食の現実認識 お雇い外国人による知識技術移入 自由民権運動と英学仏学の隆盛 政府主導のドイツ学振興 日本語の革命的変革言文一致 近代的国語辞典言海の誕生2025/04/28
qwer0987
2
幕末や明治維新を外国語習得と教育の視点から探っており、視点のユニークさが目を引く。幕末は諸外国が日本に押し寄せた時期だけに、外国語の習熟が交渉の面でも必要だった。そのため幕府もオランダ語に代わって英語の習得を命じ、留学も積極的にさせていたが、幕臣が通辞という点で情報収集にバイアスが入ったであろう。一方の雄藩は末端から直接外国人と接して情報を得てきたという差は大きい。そうして新政府後は留学に積極的に力を入れ、世間でも英語ブームも起きる。同時に新政府は「国語」の作成にも力を注いでおり、その流れは興味深かった2025/07/30