出版社内容情報
史料とは何か? 解釈が複数になるのはなぜ? 安易な議論に振り回されないために、歴史家が築いてきたこれらの理屈を学べば、歴史の解像度がもっとあがる!
内容説明
史料の山に埋もれ、ひたすら解読している?過去の出来事の是非を論争する?このようなイメージがある歴史学では実際に何が営まれているのか。明らかにしたいものは様々でも、歴史学には共通のプロセスがある。史料とはなにか。それをどう読んでいるのか。そこからオリジナルな議論をいかに組み立てるのか。歴史について語る前に、最低限知っておきたい考え方を解説する。
目次
第1章 歴史家にとって「史料」とは何か
第2章 史料はどのように読めているか
第3章 論文はどのように組み立てられているか(1)―政治史の論文の例
第4章 論文はどのように組み立てられているか(2)―経済史の論文の例
第5章 論文はどのように組み立てられているか(3)―社会史の論文の例
第6章 上からの近代・下からの近代―「歴史についての考え方」の一例
著者等紹介
松沢裕作[マツザワユウサク]
1976年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程中退、博士(文学)。東京大学史料編纂所助手・助教、専修大学経済学部准教授をへて、慶應義塾大学経済学部教授。専門は日本近代史、史学史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
140
歴史に興味があって関係書を読むことも多いが、著者である歴史学者がどのような立場や手法で史料解読や論文組み立てをしているかは知らなかった。史料の内容だけでなく書き手は何を言いたかったのか、当時の読者がどう受け取ったかまで解釈し、論文とする過程で理論のみならず想像力が大きなウエイトを占めている。歴史について語る際は、問題を提起した学者の想像力こそ重要かもしれない。あと本書では言及されていないが、椿井文書のような偽文書や従軍慰安婦報道での偽証問題など「信用性が揺らぐ史料」の取り扱いについての考えも知りたかった。2025/03/25
遥かなる想い
85
2025年新書大賞第3位。 歴史家というものを改めて知るにはいい書物である。 歴史学の共通のプロセス そして史料とは何か、 どう読み込まれているのか…普段馴染みのない 世界が丹念に描かれる。 政治史、経済史、社会史などの組立ても 丹念に描かれ、馴染みのない世界だけに 理解は できないが、新鮮ではある。 歴史に学ぶと言いながら、実は歴史家の描く 歴史はどう描かれているのか知らない我々には、興味深い作品だった。2025/09/28
venturingbeyond
57
帯の『歴史の解像度があがる!』のコピーの通りの良書。1・2章では、歴史学における史料の位置づけが、広く我々が行う「過去に生じた行為の実在性を語る(〜を元に語る)」ことと、専門の歴史家が史料中の歴史的根拠を示して歴史叙述を行うことの異同を通じて論じられる。次の3〜5章では、政治史・経済史・社会史の3つの日本近代史の論考が例示され、歴史叙述の実際が手際よく腑分されて、歴史家が何をどのように明らかにしようとしているのかが示される。2024/11/20
1.3manen
52
歴史家の叙述は、過去の出来事・状態についての情報を、複数つなぎ合わせて、相互に関連付けることによって成り立っています。情報は、何らかの方法で 使われる(傍点)(020頁)。歴史家は、過去の出来事・状態に関するある情報を、別の情報と組み合わせて、まとまった記述をする場合、情報には根拠がある前提で仕事している専門家(027頁)。社会史・民衆史では、対象の人が使う言葉に注目。どのように組み合わせて使うか、相互にどのような関係かが分析される(221頁)。2025/07/18
inami
30
★3 過去に起きた事件や、人物の一生、過去の社会のありさまについて何かを語ることは、なにも歴史家という専門家に限られたものではなく、私も日常的な会話で行なっている。しかし専門家というからには、何か専門家なりの仕事の仕方というのがあるのだろう。本書では、その歴史家たちの仕事ぶりを、歴史家たちが実際に書いた文章を元に説明している。司馬遼太郎の歴史小説が、どれもこれもやたらに面白いのは、著者が膨大な史料を参考にし、それに著者の歴史観(言いたいこと)をうまく調合し化学反応を起こさせているいるからか。2025/11/14




