出版社内容情報
日中の書道史の碩学が、近年の新たな研究成果に基づき、古代から近代まで、自由で伸びやかな日本独自の文字文化の歩みとしての書道史を新視点から描きなおす。
内容説明
日本書史の碩学が、近年の新たな研究成果に基づき、日本の書がもつ多様性と深みを新視点から明らかにする。わが国の書の原点を稲荷山古墳鉄剣象嵌銘や聖徳太子「法華義疏」に見、近年中国で見つかった吉備真備の李訓墓誌銘などを例に挙げつつ、その発展史を辿る。さらに三筆・三跡と呼ばれる平安期の能書家、儒者、西行・寂厳から良寛に至る僧侶、頼山陽ら文人の書から、中国基軸の漢字文化史とも異なる、自由で伸びやかな日本独自の文字文化の歩みとしての書道史を描きなおす。
目次
第1章 二つの古代鉄剣象嵌銘
第2章 聖徳太子『法華義疏』の書法
第3章 吉備真備の書法
第4章 仮名の創生と工夫
第5章 三筆から三跡へ
第6章 西行の仮名と西行風仮名
第7章 江戸の唐様と朝鮮書道
第8章 儒者の唐様と書僧の墨跡
著者等紹介
魚住和晃[ウオズミカズアキ]
1946年生まれ。神戸大学名誉教授。孫文記念館館長。きび美ミュージアム副館長。日中の書道史を研究。筆跡鑑定でも知られる。東京教育大学芸術学科卒業。同大学院教育学研究科修士課程修了。文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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OjohmbonX
5
朝鮮の書道があくまで中国書法の歴史に沿った形で展開された一方で、日本の書道はもはやそこを踏まえずに発展したという。それは日本で律令制が導入されながらも、早々に放棄されて形骸化したのと似ている。帝国(中国)に対する周辺(朝鮮)と亜周辺(日本)の差が、文字表現においても現れている。その中にあっても、儒者は中国の伝統を保持し、江戸時代に朝鮮通信使への歓待の中で存在感を発揮したのは面白い。書の書き手を同定するのに、書の文字表現や内容を、その人物の立場、書法の発展史、中国との関係等と照合する方法も面白かった。2024/07/01
koko0koko
0
稲荷山古墳出土鉄剣の銘文から始まるのが予想外かつ興味深い。西行真筆の真贋について論じてる部分が一番面白く納得させられた。中国書道史に比較して日本書道史本の売れなさを嘆かれていたが、読後の感想としては日本書道史は中国書道史を前提としてるような所が見受けられるので仕方ないんじゃ無いかなと。とはいえこの本は中国本に負けないくらい面白いと思う。2024/04/08
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