出版社内容情報
渡邊 大門[ワタナベ ダイモン]
著・文・その他
内容説明
嘉吉の乱とは前代未聞の室町幕府将軍の暗殺事件。籤引き将軍・足利義教は専制的な強権政治、「万人恐怖」と呼ばれた守護や公家への理不尽な仕打ちを行い、その死は「自業自得」とまで書かれた(伏見宮貞成『看聞日記』)。将軍殺害は幕府と守護の関係に大変化をもたらしたが、事件にいたる背景には社会的な混乱も大きかった。旱魃や風水害による飢饉、重税、大規模な土一揆の頻発。大地震、疫病の流行による不安。幕府による抑えがきかなくなった守護や守護代の台頭。のちの下剋上時代の到来を予兆する嘉吉の乱。その全貌とは。
目次
第1章 室町幕府と守護赤松氏
第2章 赤松満祐播磨下国事件
第3章 籤引きで選ばれた新将軍
第4章 社会情勢の変化―天災と疫病の時代
第5章 嘉吉の乱勃発する
第6章 戦後処理と赤松氏の衰退
第7章 赤松氏、復活への道のり
著者等紹介
渡邊大門[ワタナベダイモン]
歴史学者。1967年神奈川県生まれ。関西学院大学文学部史学科日本史学専攻卒業。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
96
足利六代将軍義教が赤松満祐に殺された嘉吉の乱は、万人恐怖と呼ばれた強権政治が原因とされてきた。しかし事件までには赤松氏の内部対立や、災害や土一揆などの続発で悩乱状態にあった満祐が、将軍との対立も重なって心身とも追い詰められていた状況があったのだ。専制権力者の義教も発作的な叛逆に対処できず、大名を抑制を図った統治が逆に仇となった。幕府が弱体化して応仁の乱を招いて実質的に戦国時代の幕開けとなったが、その混乱に乗じて滅ぼされた赤松氏が復活するのだから、中央政権が存在したとは思えないアナーキーな世情が見えてくる。2023/01/31
みこ
24
嘉吉の乱「前後」の話。つまり、赤松家と足利家の因縁を通じて紹介。戦国時代の始まりが応仁の乱と言われているが、その応仁の乱の火種である細川勝元と山名宗全の対立は嘉吉の乱の戦後処理から始まっている。つまり、戦国時代の本当の始まりはこの乱なのかもじれない。後年、戦国時代真っただ中にほぼ同じことを松永久秀もやってる。赤松家の系図が巻末でも巻頭でもない中途半端な頁に書いてあるのが面倒くさかった。新しい名前が出てきても誰の何?といちいち見返さなければならない。親の顔より見た足利家の系図はばっちり巻頭に載っているのに。2022/10/23
ようはん
22
室町六代将軍足利義教の暗殺で知られる嘉吉の乱のみならず室町時代における赤松氏の歴史も語られている。満祐の行動は赤松氏が壊滅的になった末路からすれば賢いとは言えないのだが、義教の苛烈な守護大名粛正に対して疑心暗鬼に陥るのも無理なく精神的にも病んでいたともなると同情もしたくなる。2022/10/31
MUNEKAZ
22
タイトルから受ける印象と違い、著者のライフワークという赤松氏の紹介がメイン。なので「嘉吉の変」に絞った考察を期待すると肩透かし感も。ただ「赤松氏」という戦国大名に成りそこなった守護大名の顛末には、興味深いものがある。思うに変の一番の余波は、残された将軍の後継者が幼子しかおらず、政治的空白が生まれたこと。転じて将軍権力の持つ調停機能が弱まり、畠山や山名、細川らの闘争に歯止めがかけられなくなったことにあると。ただ家格意識も強く残っているので、幕府の枠組みが根本的に崩壊するには至らなかったか。2022/10/02
nishiyan
18
室町幕府六代将軍足利義教が暗殺されたことで知られる嘉吉の乱。首謀者である赤松氏の歴史を詳らかにすることで室町幕府誕生から衰退までの歴史を紐解く新書。応仁の乱以降に顕著になったかと思っていた守護代による下剋上の萌芽が嘉吉の乱にあったという点は面白かった。乱で討伐された赤松氏が守護代の浦上氏や小寺氏の支持がなければ立ち直れなかったことは興味深い。複数の守護国を持つ大名の権力基盤の弱さは本来武士が土地と結びつくことで力を持っていたことを考えるとさもありなんと思った。2022/11/25