出版社内容情報
5常任理事国の一角をなすロシアの暴挙により、安保理は機能不全に陥った。拒否権という特権の成立から、国連を舞台にしたウクライナ侵攻を巡る攻防まで。
内容説明
「あなたたちは国連を終わりにするのか。いいえと言うならただちに行動すべきだ」。二〇二二年四月五日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、国連安全保障理事会でのオンライン演説で訴えた。安全保障理事会で拒否権を持つ五つの常任理事国の一国であるロシアによるウクライナ侵攻は、安保理の機能を停止させ、国際秩序の根幹を揺るがしている。たった五つの国にだけ拒否権という特権を認める歪な仕組みはなぜ生まれ、温存されてきたのか。その誕生からウクライナ侵攻を巡る攻防まで、国連安全保障理事会の真実を描く。
目次
第1章 壊された国連
第2章 戦後の世界秩序とは何か
第3章 中国の台頭と対テロ戦争の時代
第4章 核兵器と五大国
第5章 これからの国連
第6章 中国は台湾に侵攻するのか
著者等紹介
小林義久[コバヤシヨシヒサ]
1968年、東京都生まれ。共同通信社外信部担当部長。京都大学卒業後、共同通信社に入社し、ウィーン、ニューヨーク、仙台、ジュネーブ支局/支社を経て現職。日本大学非常勤講師を務める。専門は国連などの多国間外交、アメリカ政治、中東欧の政治・社会問題(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
67
国際問題を専門にするジャーナリストが、ロシアのウクライナ侵攻と中ロの国連安保理拒否権行使を切り口にして、幅広く国連、特に安保理の抱える問題点を解説したもの。そもそも第2次世界大戦の「勝者連合」であり、その代表格である5か国(中国の転変については記載はあったが、当初の参加の事情はもう少し掘り下げて欲しかった)が拒否権を行使することの問題点(ある意味必然ではあるが)を指摘する。特に「警察官が自ら犯罪を起こして取り締まりを拒む」といった意味合いの例えはよく本質を突いている。一方ウクライナ事情はあまり詳しくない。2022/11/20
きみたけ
59
著者は共同通信社外信部担当部長で日本大学非常勤講師の小林義久氏。国連などの多国間外交、アメリカ政治・社会問題を専門。国連の安全保障理事会の成り立ちや拒否権の仕組みなどがよく分かる一冊。常任理事国であるロシアによるウクライナ侵攻は食い止めることができるのか、中国の「台湾有事」の予測、国連が役割を果たすための安保理改革の話などを記載。日本も人道・人権を重視する立場で貢献して欲しいが、難民受入・死刑制度廃止などの改善をしなければ発言力は弱いままとのこと。せめて敵国条項は撤廃して欲しいです。2023/01/25
nagoyan
12
優。全体にジャーナリスティック。第1章はウクライナ戦争のもう一つの戦場「国連安保理」の機能不全を描く。第2章は、国連・安保理の冷戦終結までの歴史。第3章は、中国の台頭以後の国連・安保理。第4章は、核兵器とP5の特権。第5章は、国連改革として小国の努力。第6章は、台湾危機。中国の台頭に対して地域安全保障体制を展望する。著書は、露暴挙に国連体制の危機。しかし、P5は自らの特権維持という共通利害には結束。P5の特権とNPT体制には強い関連。日独印らの安保理改革は成功しない。小国主導の国連改革に期待、と説く。2022/07/16
かんがく
10
著者は元新聞記者なので、国連に対する様々な人々の貴重な言葉や、現場の雰囲気などはよく伝わってきた。一方、国連に関する説明や論考は教科書レベルの域を越えずに期待外れだった。2023/02/07
ア
6
タイトルは国連安保理とウクライナ侵攻だが、内容は国際政治・国連等について様々な視点から扱っている。特にG77やS5(スモールファイブ)、核兵器禁止条約の位置付け等については、これまで知らなかった視点が得られ、有益だった。2023/03/30