出版社内容情報
単に「現在」を示すだけだった「新しい」という言葉が、いかにして幕末維新期には大衆をリードする言葉にまで変貌したのか。日本人の進歩への志向の系譜を探る。
内容説明
「新しい」が現在のような「進歩的だ」「新鮮である」という意味になったのは近世になってからであり、古代や中世では単に「現在」を示すものだった。「新しさ」が江戸時代に評価を高め、いかにして幕末維新期に大衆をリードするキャッチフレーズになったのか。「本」に立ち返ろうという復古思想とのせめぎ合いの中、明治以降の高度な外来の文化を受け入れる下地となる学術や思想がどう育ってきたかを、「新」や「本」の字義の変化をたどって検証。この国の進歩への志向の系譜を探る。
目次
第1章 越えられない本家―古代・中世の「新」(最初を尊んだ時代;和歌と能楽 ほか)
第2章 継承発展の道筋―近世前期の「新」(ベストセラーの新編;元禄歌舞伎 ほか)
第3章 文芸と学術の興隆―近世後期の「新」(江戸歌舞伎のリアル;東西の医学思想 ほか)
第4章 変革期を彩る造語―近代の「新」(維新と文明開化;新聞の時代 ほか)
著者等紹介
西田知己[ニシダトモミ]
1962年生まれ。日本史学者。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程単位取得退学。江戸文化を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おおにし
15
(読書会課題本)「新しい」という言葉の変遷をその対義語である「旧・古・本など」と比較して、日本人が「新しさ」をどう理解してきたかを探るという著者の趣旨は理解できたが、文化・芸能・科学・政治などジャンルを広げ過ぎてとても読みづらくなってしまった点が残念。明治初期は「維新」を「一新」と呼んでいたとか、「本末転倒」は鎌倉時代の本山、末寺から由来しているとされてきたが、実は昭和になってから翻訳語として登場した言葉など、日本語トリビアのネタ本としては評価できる。2022/10/25
本命@ふまにたす
4
日本思想、文化史の中で「新しさ」の概念がどのように捉えられてきたかを論じる。著者の専門の関係か、近世についての検討が中心となっている。2023/06/11
Go Extreme
1
越えられない本家―古代・中世の「新」: 最初を尊んだ時代 和歌と能楽 古語と現代語 継承発展の道筋―近世前期の「新」: ベストセラーの新編 元禄歌舞伎 俳諧の新しみ 享保の改革 受け渡された工夫 文芸と学術の興隆―近世後期の「新」: 江戸歌舞伎のリアル 東西の医学思想 復古から革新へ 数学と天文学 発明と発見の闇 変革期を彩る造語―近代の「新」: 維新と文明開化 新聞の時代 文壇と舞台2022/05/06
ぽん
0
「新」や「本」の意味や捉え方が変わっていく歴史が面白い。個々のエピソードについても、歴史の教科書に載るような単語を一段深く理解できる気がする。菓子類に使われた「新規」が二番煎じを意味していたとか、今と全然使い方が違って面白い/ひとつのワードを丹念に調べたという点では目を見張るけれども、読み物としてはもう少し展開が欲しかったように思う。一辺倒という気がしてくる。2022/04/08