出版社内容情報
日本人が当事者でありながら忘れ去った朝鮮の民衆の苦難の歴史。その真相を新たな研究成果や資料をもとに探りつつ、日韓歴史認識の溝を埋める可能性を考察する。
内容説明
歴史をめぐり日本と韓国は深刻な対立を繰り返している。徴用工や慰安婦の問題でも解決策を見いだせない。その原因を探ると、浮かんできたのは日本人が当事者でありながら忘れ去った朝鮮の民衆の苦難の歴史の数々であった。新たな研究成果や資料をもとに、東学農民戦争や義兵の鎮圧、三・一運動、関東大震災などの実態に迫り、そのような歴史を日本人がどのように記憶したのか、日本人の抱く歴史像の出自と来歴を見つめ直すことを通して、歴史認識の溝を埋める可能性を考察する。
目次
第1章 徴用工訴訟
第2章 東学農民戦争
第3章 関東大震災
第4章 二つの虐殺を結ぶ線
第5章 忘れ去った過去
第6章 三・一運動
第7章 あいまいな自画像
第8章 いくつもの戦後
終章 次の時代を展望する歴史像のヒント
著者等紹介
渡辺延志[ワタナベノブユキ]
1955年生まれ。ジャーナリスト。2018年まで朝日新聞に記者として勤務。歴史を主な取材対象とし、青森市の三内丸山遺跡の出現、中国・西安における遣唐史の墓誌の発見、千葉市の加曽利貝塚の再評価などの報道を手がけた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
二人娘の父
9
これは衝撃的な史料探求の書。歴史認識で食い違う日韓両国という問題について、一般的な日本人が知りようがない史実を探求することで、まったく新しい視点を提供している。日韓問題を考える転機となる文献と言ってもよいのではないか。そういう点ではタイトルが弱い気がする。いずれにしても良書。2021/09/10
jamko
9
徴用工裁判の判決とそこからの対立に興味を持った著者が、東学農民戦争、関東大震災、三・一運動ら近代における日朝関係の重要な事件を調べていく。日本と韓国の歴史認識のズレに、日本人があまり知らない(韓国にとっては重大な)加害の歴史があることを指摘していく。 本書では東学農民戦争について、2018年に北海道大学の井上勝生教授によって学会で発表された論文を取り上げる。甲午農民戦争が一度落ち着いたその後に再蜂起した東学党に日本軍が徹底的な虐殺をしたことが日本兵による記録として残っていたこと。まったく知らなかった。2021/08/22
しゅー
2
★★★「近代の日本が、日本人が、何をしてきたかという歴史的自画像があまりにもあいまいで、疑問と矛盾に満ちたものであることを認識、自覚することなくしては、この問題の本質的な解決は望めないように思えてならない」著者は韓国の歴史観に与するわけではなく、まずは日本人の「自画像」、特に「栄光の明治」についての再点検を提案する。東学農民戦争や義兵運動、パルチザンとの戦い、日本人にとってあいまいな認識しかない半島での出来事がいかに日本国内の出来事に影響したか。日清戦争前後と関東大震災の歴史の空白を埋めようとする力作だ。2021/07/28
Go Extreme
1
徴用工訴訟:徴用工をめぐる対立 日本による朝鮮の支配は不法 挑戦半島で何をした 東学農民戦争:隠された歴史 徹底された日本軍トップの意志 関東大震災:強まる主張・虐殺はなかった 子どもたちが見た横浜の震災 なぜ流言を信じたのか 2つの虐殺を結ぶ線:日本軍兵士の実像 正体不明の敵 忘れ去った過去:日清戦史 歴史改ざんの真相 三・一運動:新発見の史料 原敬首相と朝鮮総督の対応 あいまいな自画像:なかったことにされた自画像 自警団 いくつもの戦後:語られない戦場体験 詐欺 次の時代を展望する歴史像のヒント2021/04/20
ミネチュ
0
「歴史認識」というタイトルからして、日本(人)と韓国(人)の歴史的な出来事に対する解釈の違いのようなありきたりな本なのかと思って読み始めました。 でも、全然違いました。 歴史認識というより、日本人が知らない日本と韓国が関係する近代の歴史的なできごとの話と何故それを日本人が知らないか、日本人の記憶から消されたのかについての話でした。 この本でもっとも力を入れて書かれているのが関東大震災における朝鮮人虐殺。これが何故無かったことにされている/されようとしているのかを考察しています。 よい本でした。2023/03/04