出版社内容情報
巫女・馬・屋敷等を模した様々な埴輪。それは古墳に飾り付けられ、治世における複数のシーンを組み合わせて再現して見せ、「王」の権力をアピールしていた。
内容説明
「王」の権力を見せつけるため造られた、古代の巨大建造物、古墳。そこに据えつけられた埴輪は、古墳を荘厳に見せる飾りであり、家形・動物形・人物形とバリエーションが増えることで多彩なシーンを再現するようになる。盛装した王を中心とした水の神をまつる祭祀のシーン、猪・鹿・鷹などの狩猟シーンなど。しかも複数のシーンは一本化され、立体絵巻のようにビジュアル化されている。治水や狩猟など王の業績をアピールして、治世の正当性を主張しているのだ。大量の埴輪生産を可能にした、工人組織の存在や社会的な“ゆとり”まで、埴輪が語る古墳時代の社会を読む。
目次
第1章 埴輪を発掘する
第2章 埴輪はどのように発展したか―三五〇年の歴史
第3章 見せる王権―人物埴輪の群像
第4章 埴輪の登場人物たち
第5章 埴輪づくりを支えた仕組み
終章 埴輪は語る―歴史の必然
著者等紹介
若狭徹[ワカサトオル]
1962年長野県生まれ、群馬県育ち。明治大学文学部考古学専攻卒業。国史跡保渡田古墳群の調査・整備、かみつけの里博物館の建設を担当。高崎市教育委員会文化財保護課課長を経て、明治大学文学部准教授。博士(史学)。藤森栄一賞・濱田青陵賞・古代歴史文化賞優秀作品賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
50
今朝の朝日新聞天声人語。植物と埴輪の関係が書いてあった。この本はそれで興味を持った人が読むといい。106-7頁に埴輪の特徴が古墳の規模によって異なることが理解される。4月から、何を教えるかな? 学び合い育ち合い。2022/03/13
ホークス
34
2021年刊。埴輪は主に3〜6世紀に作られた。多くは古墳の表面や周りの堤上に配置され、徐々に壊れていく物だったらしい。多様な造形から、古代世界の一端を感じられた。人物埴輪は、衣服や髪型や装飾品が今とは違い、顔や身体にほどこした入れ墨は鮮やか。でも杯を掲げる所作とか、口角の上がった笑顔(呪術的な意味あり)は現代人と同じ。一部だけ分かる様な不思議な気持ちになる。色んな学説が助けてくれる点もあるけど、ある文化を本当に知るには体感するしかないと思う。それが叶わなくても、違う文化と認めて一歩ずつ理解を心がけたい。2024/04/20
石油監査人
31
著者は、考古学者で明治大学准教授。この本では、埴輪に関する話題を中心に、豊富な写真や図、データを使って古墳時代の社会の実像を解説しています。 特に、データが意味するところは重要で、例えば、一基の大型の前方後円墳に飾られる円筒埴輪の数は、数千本の規模となることから、専門の工人集団の形成、原料の採取地での工房の建設、燃料用の大規模な森林伐採、完成した埴輪を運搬するための港湾設備などの水運網の整備などが行われていたと考えられます。可愛い表情の埴輪はこの時代の色々なことを教えてくれるものです。2024/11/13
HMax
28
「はにわのヒミツ」を文字を多くして新書にした感じの本。240cmの円筒埴輪は圧巻。2025/05/03
有理数
17
埴輪はもちろん日本史で習ったが、それだけである。だが、埴輪にはそれ以上に、もっと多くの物語があり、ロマンがあるということがわかる一冊。古墳がかなり登場するので少し混乱してしまったものの、図版も多く、そういったものの眺めているだけでも楽しい。ユーモラスな埴輪、動物、人間、職業――あらゆるものを模した埴輪は、私の想像を遥かに超える姿と、雄弁さを持っている。また、その姿の遍歴、古墳における配列の意味など、初めて知った事実も多く、勉強になった。何より埴輪っていいよね! という気持ちが湧いてくる。面白かった。2021/09/08