出版社内容情報
コロナ禍の今こそ、自然と共生する暮らしが必要だ。福島県飯舘村の農民と協働し、ボランティアと研究者を結集してふくしま再生の活動をしてきた著者の活動記録。
内容説明
学生時代に東大大学院で高エネルギー加速器物理学を研究していた著者は、福島第一原発事故に際して「被災地の放射線量はどうなっているのか」と疑問をもち、福島県飯舘村の農民と協働して再生への活動を始めた。ボランティアと研究者を結集して「ふくしま再生の会」を結成し、飯舘村で自然と人間の共生を訴える著者が、震災から十年の節目にこれまでの活動を振り返り、都市から地方への流れが進むポストコロナの時代に不可欠な、自然との共生理念とその実践の道を提示する。
目次
第1章 飯舘村の日常生活
第2章 周辺をさまよう
第3章 飯舘村に入る―ふくしま再生の会創設
第4章 試行錯誤―二〇一一年六月~二〇一二年二月
第5章 課題の解決を目指す
第6章 いろいろな地域の人をつなぐ
第7章 自然の中で人間の新しい生き方を創る
終章 地域を主役に、自然と人間が共生する社会へ
著者等紹介
田尾陽一[タオヨウイチ]
1941年神奈川県生まれ。特定非営利活動法人「ふくしま再生の会」理事長。元物理研究者。東京大学理学部大学院物理専攻修士課程修了(高エネルギー加速器物理学)。IT企業の経営や社会システムデザインの研究など多岐にわたる活動ののち、福島県飯舘村に移住している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小鈴
17
今から百年ほど前、田中正造は「真の文明は山を荒らさず、川を破らず、村を破らず、人を殺さざるべし」と述べたが、原発事故は「山を荒らし、川を荒らし、村を破り、避難の過程で結果的に人を殺してしまった」。彼らは被災者ではなく被害者で、被害者がいれば加害者がいる。加害者は地域再生に本当の責任をもとうとしない。せいぜい不十分な見舞金を出し、他人事として同情の気持ちを表すことでお茶を濁し続けるだろう。そんなもんだとニヒルになって私たちは日常に戻る。私たちはどうすればよいのか。虚しさより一歩前へ。彼らの取り組みの全容。2021/05/06
小鈴
16
この本の読み方は二通りあって、一つは文字通りの原発事故で被爆した飯舘村を除染し、コミニュティを回復しようとする活動の記録。もう一つが東大闘争でドロップアウトした著者が現代の「田中正造」のように活動する姿だ。東大時代のネットワークで人脈も豊富、実務能力が高くテキパキと問題を解決して前に進む。しかし、なぜここまでのめり込むのか分からない。著者が広島で四歳にして原爆のきのこ雲を見たからだけでは説明がつかない。60年代の学生運動で挫折したものの胸にはあのときのアツさを残していた。著者の人生を知りたくなった。2021/05/06
新橋九段
3
地域目線での復興過程を知ることが出来る。とはいえ、著者の「謎に張り切っているよそから来た人」感に違和感と既視感も覚える。2022/06/13
Go Extreme
2
福島での10年間:現代は真の文明社会か 自然と人間の共生を取り戻す 飯舘村の日常生活:豊かな毎日 薪ストーブとミツバチ 村の日常生活を破壊した原発事故 ブドウ畑をつくる 交流の家の建設 周辺をさまよう:行政組織同士の連携 技術戦略戦専門委員会 ブログで生命発表 飯舘村に入るーふくしま再生の会創設 試行錯誤 課題の解決を目指す:地域コミュニティ再生 いろいろな地域の人をつなぐ:都会と農村の交流 自然の中で人間の新しい生き方を創る 地域を主役に、自然と人間が共生する社会へ:二項対立の原理主義は地域を再生できず2021/01/24
錦織 祐一
0
放射能・放射線を「正しく恐れる」。原発事故当時よく耳にしたフレーズですけど、事故から14年の今もまったくできておらず、あまりにも不条理が多いことを福島に勤務して痛感する日々です。この本は「ふくしま再生の会」が飯舘村民の皆さんぐるみで汗を流して科学的なデータを集めて提示し、どうすれば克服できるのかの知恵を学者から住民まで一体となって出し合った日々の記録が極めて克明に記録されています。理不尽さに打ちのめされず「事実」をきちんと提示し、みんなができることを持ち寄って掛け合わせ、楽しむ。すごいコミュニティーです。2025/01/02
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