出版社内容情報
日本の近代資本主義を確立した渋沢栄一の精神は、いかに高橋是清、岸信介、下村治ら実務家たちに受け継がれたか。気鋭の評論家が国民経済思想の系譜を解明する。
内容説明
水戸学のプラグマティズムを、近現代日本を支えた経済思想へと発展させた人物こそ、渋沢栄一であった。『論語と算盤』で水戸学の朱子学批判を賎商思想批判へと読み換え、尊王攘夷思想から継承した経済ナショナリズムで日本の近代資本主義を確立した渋沢。その精神を受け継ぎ経済政策の実践に活かした高橋是清、岸信介、下村治ら実務家たちの思想に「日本経済学」と呼ぶべき思考様式を見出し、そのプラグマティズムと経済ナショナリズムに危機に立ち向かう実践的姿勢を学ぶ。
目次
第1章 日本の経済学
第2章 論語とプラグマティズム
第3章 算盤とナショナリズム
第4章 資本主義の大転換
第5章 社会政策の起源
第6章 明治の通貨論争
第7章 経済ナショナリスト・高橋是清
第8章 危機の経済思想
第9章 産業政策の誕生
第10章 岸信介の論理と倫理
第11章 下村治の予言
著者等紹介
中野剛志[ナカノタケシ]
1971年生まれ。評論家。専門は経済学。東京大学教養学部卒業。通産省、エディンバラ大学、京都大学准教授等を経て、現在は経済産業省所属。経済ナショナリズムを中心に評論活動を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
33
本書が明らかにしようとするのは、渋沢栄一、高橋是清、岸信介、下村治に共通して流れている思想(026頁)。重要なことは、渋沢が株式会社制度紹介、普及させただけではなく、自ら設立や経営といった実践に深く関わっていたこと(092頁)。市民社会論で重要なのは、共同体の制約から自立したはずの個人が、結果として、国家に従属する羽目となり、かえって自立を失うという逆説である(096頁)。2021/05/01
もりやまたけよし
28
経済思想史の本と言う試みだけども、企画倒れのような気がしました。4人の人物の紹介をその経済思想から行おうと言うもの。理論の解説と歴史とが複雑に絡んでしまいどっちつかずに終わった感があります。2023/03/20
ま
18
奇跡の経済教室が面白かったので。本書は渋沢栄一、高橋是清、岸信介、下村治の4人を挙げて、彼らがプラグマティストでありナショナリストであったことや、現代貨幣理論と彼らの思想との相違点を示す。平成以降で、彼らに続いて取り上げたい人物がいないとの嘆きは、著者自らがその系譜を継ぐのだという決意表明にもみえた。2021/02/10
健
13
渋沢栄一、高橋是清、岸信介、下村治の活動と著作を基に日本独自の「日本経済学」の流れを明らかにしようとした著作。いずれも「経済ナショナリズム」の立場からプラグマティズムに裏打ちされた経済政策を主張し、主流派経済学や新自由主義とは根本的に異なると説く。相変わらず歯切れが良いので面白く読み進めることができた。現代貨幣理論との類似点も触れられていて興味深い。MMTについて議論がなされWGIPが明らかになりつつある今日、「日本経済学」が復活して日本を立て直すべく大きく舵を切ってくれることを願ってやまない。2020/10/20
筑紫の國造
12
近代日本を代表する四人の人物に焦点を当て、彼らの中に日本独自の経済学を探ろうとする試み。渋沢栄一、高橋是清、岸信介、下村治らの経済感に共通するプラグマティズムは、教条的な自由主義経済学とは違って経済の実態に即し、国民経済を重視するものだったことを明らかにする。野心作で、かなり見所があるといえるだろう。ただ、一人の人物を紹介している途中で関係のある別の人物の話をそこそこ詳しく紹介しており、理解の妨げになる。著者の現代貨幣理論の思想もかなり強く出ており、その点は注意しながら読む必要がある。2024/07/06