出版社内容情報
どのように日本へやってきたか。なぜ失踪者が出るのか。働く彼らの夢や目標と帰国後の生活とは。国際的な人材獲得合戦を取材して、見えてきた労働市場の真実。
内容説明
中国にかわり技能実習生の最大の供給国となったベトナム。「労働力輸出」を掲げる政府の後押しもあり、日本を目指す農村部の若者たち。多額の借金を背負ってまで来日した彼らの夢は「三〇〇万円貯金する」こと。故郷に錦を飾る者もいれば、悪徳ブローカーの餌食となる者もいる。劣悪な企業から逃げ出す失踪者は後を絶たない。日越の関係機関、実習生、支援団体を取材し、単純労働者の受け入れ先進国・韓国にも飛んだ。国際的な労働力移動の舞台裏を全部書く。
目次
序章 ベトナム人技能実習生になりたい
第1章 なぜ、借金をしてまで日本を目指すのか
第2章 なぜ、派遣費用に一〇〇万円もかかるのか
第3章 なぜ、失踪せざるを得ない状況が生まれるのか
第4章 なぜ、特定技能外国人の受け入れが進まないのか
第5章 ルポ韓国・雇用許可制を歩く
著者等紹介
澤田晃宏[サワダアキヒロ]
1981年兵庫県神戸市生まれ。ジャーナリスト。NPO法人日比交流支援機構理事。高校中退後、建設現場作業員、男性向けアダルト誌編集者、「週刊SPA!」(扶桑社)編集者、「AERA」(朝日新聞出版)記者などを経てフリー。外国人労働者を中心に取材、執筆活動を続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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なかしー
43
日本の技能実習制度の実態を、制度ではなく「人」の視点から描き出すルポ。ベトナムやミャンマーなどから来日した実習生たちの声を丹念に拾い上げ、「3年間で300万円を貯めて帰国する」という現実的な目的や、帰国後の生活・起業までを追う。本書は、統計的視点から移民政策を分析した永吉希久子『移民と日本社会』とは対照的に、制度の現場に焦点を当てた“足で稼いだ”記録です。特に制度上の建前である「技能移転」が実態としてはあまり機能していない点や、日本側が実習生を人手不足を補う労働力として扱っている姿が浮き彫りにする。2025/08/30
ばんだねいっぺい
28
祖国でも足元を見られて、文明国だと思った日本で裏金を吸われ、いじめを受けて失踪する。日本への憎悪を抱きながら、働きながら知った日本の「緩み」につけこみ、クリミナルグループとして暗躍せざるを得ないそんな状況を生んではいけない。2020/10/13
綾
27
仕事柄少し興味があって、読みました。技能実習生と特定技能の実態についてよく分かる良書です。どこの先進国も同じ問題を抱えてるんですね…。あとがきの最後に、2025年に人手不足のピークが来てそれを乗り越えれば外国人もいらなくなると某省庁幹部が言っていたとあるが、本当にそうなのか?2022/05/28
おいしゃん
25
なぜ技能実習生たちは、多くの借金を背負ってまで日本に来るのか。そして薄給に耐えながらも、短期間で故郷に家を建てるまでになるのか。その背景が見えてくる本だったが、出身国や職場による違いや闇も多く、全貌がわかったような気になってはいけないとも感じた。2023/06/03
かんがく
19
丁寧なルポ。技能実習生と特定技能外国人、特にベトナム人に絞って、現地での送り出し企業、監理団体、受け入れ企業、失踪者、実習生の家族など様々な人へのインタビューをしており実情への理解が深まった。NHKで取りあげられて話題になったような労働問題の報道を一面的であるとしつつ、わいろや違法労働などの点にも触れている。2012年頃から中国からベトナムへと送り出し国が切り替わったが、ベトナムの経済成長や、他の先進国との競争の中で、日本が魅力的な受け入れ国でなくなる可能性も示唆している点に危機感を覚えた。2020/06/13