出版社内容情報
「差別はいけない」。でも、なぜ「いけない」のかを言葉にする時、そこには独特の難しさがある。その理由を探るため差別されてきた人々の声を拾い上げる一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
venturingbeyond
46
良書。「青い芝の会」の活動を中心に、障害者の当事者運動が「健常者社会」を支えるマジョリティの何を告発し、どのような社会変革を望んだのか、その歴史と主張のコアがよく分かる。マジョリティ側に立つ障害者の親の苦難や苦労にスポットライトが当たり当事者が置き去りにされる構図、フェミニズムの性的自己決定権(中絶する権利)との相克、「青い芝の会」のメンバーが実践した性的自己決定権の行使が有する(当時としての)ラディカルさとその家族観が有する保守性など、考えさせられる論点が列記されており、学びの多い一冊でした。2024/10/01
TATA
46
新書と思って油断して読んでるといい意味で裏切られた。相模原の例の事件を踏まえながら障害者から見た社会論を展開する。社会が強靭さを具備すれば当然その中でより多くの人が社会的な平等のもと扱われるはず、社会福祉や公益性はそうやって養われるもの。そう考えるとまだまだ現代社会に足りないところはたくさんあるわけで、まさにその闘争の歴史を扱った強烈な一冊。ダイバシティーと言葉で言うのは簡単なのでしょうが、より強靭な社会の一員となるための道のりはまだ遠いのですね。2022/03/06
イトノコ
28
戦後の障害者の活動を「青い芝の会」を中心に分析する。/本質ではないかもしれないが…どこかで聞いたような話が多い事に気づく。貧困層は子供を作るな、LGBTは生産性がない、妊婦やベビーカー連れは公共交通機関を使うな、引きこもりは親に殺されても仕方ない…いずれもごく最近の言説だ。戦後日本は差別の範囲を、障害者の外へ逆に拡大させてきたのか。それは生産的、効率的のお題目のためもあろうが、それ以上に自らを「健全者」としてそれ以外の人々を見下したい欲求による気がしてならない。その極地が相模原の事件なのかもしれない。2020/06/30
ネムル
24
障害者差別と闘ってきた青い芝の会の活動と、その中心人物による著書『障害者殺しの思想』『母よ!殺すな』を中心に、差別感情を問う。「愛と正義」をエゴイズムと否定する会のテーゼは過激で露悪的ながらも、健全者の障害者感を脱構築する試みに思える。差別者による無意識な行為を転覆させていく言説、著者は日本文学も専門にしているらしいが、一貫して活動における言葉の使用を大切にしている。すごく好印象だ。相模原事件でしきりに唱えられた「障害者も同じ人間」、これはマジョリティが使うと抽象的で曖昧な「人間」像に同調圧力をかける2020/06/09
coolflat
19
青い芝の会の運動をもとに、障害者差別と日本社会のあり方について問うている。117頁。青い芝の海は、障害者の親がしばしば吐露する。この子よりも先に死ねない」「この子は自分が守らなければならない」という切実な思いこそ、障がい者を抑圧する心理が潜んでいると指摘しました。多くの親には、障害者と親が別々に生きていくといった発想がなく、障害者のすべてを抱え込もうとしてしまう。そうした親の態度が障害者の自立を阻む壁となり、その「抱え込み」が限界を超えて破綻した時、親子心中や子殺しが発生すると、彼らは批判したのです。2022/10/04