出版社内容情報
自由な個人から大衆社会への転換を、人間・国家・意識・政治・道徳・思考の六つの領域で考察。不安定化する人類文明の行く末を探る。
船木 亨[フナキ トオル]
著・文・その他
内容説明
「自由で平等な個人」という近代にあった理想。だが、明らかにそれは誤りである。ポピュリズムが跋扈するポスト・トゥルースの現代は、「群れ」社会への転換をすでに遂げている。その転換も昨今急激に生じたのではない。現代思想で論じられてきたその社会の変容を、順に「人間」「国家」「意識」「政治」「道徳」「思考」の六つの主題について解き明かしていく。AIで人間が不要になる、といった皮相な議論よりもはるかに深い次元で人間の終焉を考察し、混迷する人類文明の行く末と、これからの生き方について講義する。
目次
プロローグ 近未来に待ち受ける生活とは?
第1章 人間―家族は消滅しつつある
第2章 国家―社会は国家ではない
第3章 意識―自我は存在しない
第4章 政治―ヒトはオオカミの群れの夢を見る
第5章 道徳―群れの分子には身体のマナーがある
第6章 思考―統計と確率のあいだで決断せよ
エピローグ 近代の発想を頭からすべて洗い流そう!
著者等紹介
船木亨[フナキトオル]
1952年東京都生まれ。東京大博士(文学)。東京大学大学院人文科学研究科(倫理学専攻)博士課程修了。専修大学文学部哲学科教授、放送大学客員教授。専攻はフランス現代哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
37
IoTによって、人間が媒介することなく機械相互の関係が成立するようになると、人間にとっては、ネットを伝わってくる情報が、人間の声であるのか、AI(人工知能)の表示であるのか、自然現象であるのかの区別がつかなくなります。ひとびとは、AIの判断を尊重することになる(020頁)。 ロボットは、言葉に意味を与える人間身体の経験をもってはおらず、言葉をコマンド(命令)やトリガー(引きがね)としてしか受けとることができない。 区別できないこととおなじであることとは、まったく別のこと(傍点、025頁)。2018/08/11
武井 康則
7
現代の中心的な考え方、民主主義や家族や法やその他諸々はすべて近代の思想であることを歴史的、文献的に証明し、近代が最盛を過ぎた今崩壊するのは当然と説く。そして今主流になってっているのは統計。平均に近いものが正で、中心から離れるほど異常となる。なるほど、多数決やポピュリズム、ヘイトスピーチの考えや方法はそうだし、コンピュータの処理とはビッグデータつまり統計だ。対する思想として情動をあげているが、それについてはわからない。2018/08/27
oooともろー
6
前著『現代思想史入門』に続く著者自身の哲学書。一種の近代批判。よく分からない部分もあるが、人間のあり方を「群れ」として読み解く流れは伝わってくる。2019/07/20
肉尊
5
自由で平等な個人という近代的な人間観は終焉を迎え、大衆社会でも管理社会でもない、単なる「群れ」があるにすぎないとする著者の主張は、読了して何となく共感できたものの、途中で挫折しそうになった。それは、過度で不適切な引用の仕方に問題があると思う。詰込み型教育の神髄ともいうほどの引用は、読み手に対する配慮に欠けると思う。さすがに映画に関しては、末尾に紹介文が載せられていたが。中だるみはするものの、第5章4部あたりから読み応えが出てくるので、途中で放り投げてしまうのは少しもったいない気がする。2020/04/08
みかづきも🍀
4
私は個人的にとても面白かった。 所々難しくて理解できない箇所はあったが、面白い思想、考え方の種を本当に沢山手に入れた。元々倫理の先生に貸して頂いた本だったが、1冊買いたいぐらいずっと大人になっても読み返したい本。読み返すほど思考が深まるような気がしてならない。だいぶ読破するのに時間がかかってしまった(3ヶ月)が何とか最後まで読み切れて、本書を購入し手元に置いておこうと思う。思考の熟した方でも少しは思考が深まるエッセンスになるとは思う。 A2 2019/07/14