出版社内容情報
なぜ朝鮮半島では思想が炎のように燃え上がるのか。古代から現代韓国・北朝鮮まで、さまざまに展開されてきた思想を霊性的視点で俯瞰する、初めての本格的通史。
内容説明
朝鮮思想史を概観すると、思想の純粋性をめぐる激烈な闘争が繰り返し展開されてきたことがわかる。思想闘争は政治闘争と直結し、その様相は朝鮮時代の儒教や、解放後の韓国と北朝鮮のイデオロギーに典型的に見られる。そしてその思想の純粋志向性はやがて運動となり、国家や共同体の成員の肉体的生命を超え「朝鮮的霊性」が燃え上がる―それが現代の韓国・北朝鮮の激烈な思想運動にもつながってきた。朝鮮思想をできるだけ客観的に捉え、全体を俯瞰するはじめての試み。
目次
第1章 朝鮮思想史総論
第2章 神話および「古層」
第3章 高句麗・百済・新羅
第4章 高麗
第5章 朝鮮時代1―朱子学(性理学)
第6章 朝鮮時代2―「実学」、陽明学、儒教以外の思想
第7章 朝鮮末期および大韓帝国
第8章 併合植民地期
第9章 朝鮮民主主義人民共和国
第10章 大韓民国
著者等紹介
小倉紀蔵[オグラキゾウ]
1959年東京生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科教授。東京大学文学部ドイツ文学科卒業、韓国ソウル大学校哲学科大学院東洋哲学専攻博士課程単位取得退学。専門は東アジア哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ntahima
20
【県図書36】標準タイム8時間8分。正直言って朝鮮半島における朱子学について充分理解できたかというと大いに疑問であるが、最後の2章(第九章の朝鮮民主主義共和国と第十章の大韓民国)については非常に興味深く読んだ。名ばかり有名な「北朝鮮のチュチェ思想」に関して踏み込んで書かれた文章を読んだのは今回初めてだし、韓国における東学思想重要さ、「疎通」の持つ意味、大韓民国建国時期が激しい論争を生む理由、北朝鮮のイデオロギー的二分論vs韓国の道徳主義的二分論、韓国の民族左派などは実体験を頭に浮かべながらハタと膝を打つ!2018/02/25
しゅん
18
全くもって不勉強だったので大変有難く読みました。儒教や仏教の相剋から生まれる思想の歴史的な動きやそれぞれの固有名詞はもちろん、キリスト教弾圧が19世紀にピークだったとか、北朝鮮のチェチェ思想の内実なども全く靄のかかった部分でした。主観を極力排すということを序盤に書かれてましたが、結構主張がこもってて、そこも面白い点でした。2020/07/23
Francis
15
3年間積読してしまい、読み始めるとこれが面白くて一気に読んでしまった。小倉先生は以前Eテレ「ハングル講座」に出ておられた姿を覚えているが、このような思想史を書かれる韓国思想史の研究者だとは全く知らなかった。あとがきで「朝鮮(韓国)はすごいんだよ」と小倉先生は書かれているがそれに尽きる。1998年私が初めて韓国を訪れた時、ソウルの街行く若者の姿に気圧されてしまったことをよく覚えている。朝鮮・韓国の「霊性」と言う人間の放つエネルギーがいかに凄まじいことか、この本を読めばよく分かる。2020/07/18
ホシ
15
古代から現代に至るまで、政治、宗教、哲学、文学の分野から朝鮮半島の思想を解説する。450頁にも及ぶ本で、全部は消化しきれないのが正直な所。しかし、コリアンの思想を通時的・網羅的に知れる本書は、この分野における格好の良書だ。強く思ったのは「朱子学を知る必要がある」という事。現代コリアンの”霊性”は表層部は植民地期と開放以降の思想が、基底部は朝鮮王朝期の思想がファクターとなっている、という印象を持った。現代コリアンの”霊性”の長短は「朱子学」が鍵を持っている気がする。歴史に関する知識も得られて勉強になる。2017/12/16
きさらぎ
10
建国神話から現代の大韓民国・北朝鮮まで、朝鮮半島の知の通史。これはすごい。後書きに「朝鮮はすごいんだよ、私が言いたいのはそれだけ」とある。「朝鮮思想の霊性」ともいう。「冷静に、客観的に」語ろうとする著者の熱い思い入れに読み手もつい引き込まれる。筆者のいう「すごい」というのは何も優れているという意味ではないのだろう。朝鮮半島の「知」の営みが、語るに値するドラマだということだと個人的には思う。神話、シャーマニズム、儒学、仏教、キリスト教。歴史、政争、文化、文学。紙面の許す限り目配りしたのだろうと思わせる。2018/03/16