出版社内容情報
私たちに知覚される場合だけ物は存在すると考える「観念論」。人間は何故この考えにとらわれるのか。元祖観念論者バークリを中心に「明るい観念論」の魅力を解く。
内容説明
私が手に持っている花は存在する。私はそう思っている。だが、その花は、私が見たり触れたりするのとはかかわりなく、存在していると言えるのだろうか―物の、それ自体としての存在を否定し、私たちに知覚される限りにおいてのみ存在すると説く「観念論」。繰り返し提出されるこの考えに、なぜ人間は深くとらわれるのか。本書は、元祖・観念論者ジョージ・バークリの思想を論じ、観念論には「明るい観念論」と「暗い観念論」の二種類が存在すると説く。「存在するのは自分の心だけ」という独我論的発想とは真逆の、もう一つの魅力ある側面をたどる。
目次
第1章 原点―バークリの生涯
第2章 助走―世界を記号と見る
第3章 前史
第4章 飛躍―ヒベルニア観念論
第5章 再考―否定の否定
第6章 魅力
著者等紹介
冨田恭彦[トミダヤスヒコ]
1952年香川県生まれ。京都大学文学部哲学科卒。京都大学博士(文学)。ハーバード大学客員研究員などを経て、京都大学大学院人間・環境学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
武井 康則
7
年若いころ、誰もが一時期、観念論の分野から哲学にひかれていったのではないか。なぜ言葉が通じるのか、通じているのか。真実はあるのか、存在の意味はなど。プラトンはおいておいいて、デカルト、カント辺りの入門書ばかり読み散らしていたが、その前にバークリがいたことは知らなかった。イギリスの哲学者バークリの生涯を簡単に思想を丁寧に紹介している。。楽天的な観念論者。今となっては見直すほどの哲学者ではないと思うのだが。2020/06/26
なつめいろ
7
バークリを軸とする観念論の入門書。しかし、バークリ観念論の対立項であると同時にそれが現れてきた土壌ともいえるロックの粒子仮説(観念-物質の二重存在を肯定)についても、相当詳しく論じられています。因果関係を記号関係に読み替える世界観、二重存在の否定から観念論に至る議論など、バークリの議論を紹介する前半部分は実に分かりやすいです。しかし、バークリがロック二重存在説から離反する場面での論理の歪みを指摘する後半(これが本書の読み所だと思うのですが)は、すごく面白いのですが腑に落ちない点もけっこうありました。2016/02/22
けいぎ
4
バークリ入門__と感じたのは最初だけで、デカルト・ロック・バークリ・カントの近世認識論論争に巻き込まれていく。。。なぜバークリが発端なのか?(わからない。)(なぜロックじゃないんだ。。。)2016/02/21
スズツキ
4
ヘーゲルはドイツ観念論にまみれた病的な文体といわれるけど、そのあたりの理解に一役買ってくれるかしらと着手。バークリの思想がメインだが、前半は楽しかったが、後半になってかなり疲れた。2015/10/26
hakootoko
3
バークリ、面白い。笑ってしまった第2章の要約。人間精神の存在:言語の恣意性=神の存在:世界像の恣意性。言語使用によって、ひとの精神の存在を推論できるように、世界像に恣意性が含まれる、すなわち言語に類比される性質があれば、神の存在が証明される。言うなれば、世界が神的かどうかチューリングテストにかけるのだ。具体的な証拠は何か。遠くに見えるものは小さく霞んで見える。小さく霞んでいることが遠くにあることを示す。バークリによれば前者と後者とのつながりは恣意的で記号的、言語的である。よって神は存在する!2021/07/18