内容説明
国境紛争・資源管理・TPP問題・地域衰退・就労者の激減…。漁業は現代日本を象徴する「課題先進産業」である。いまや漁獲量はピーク時の半分以下になり、約40年間で漁業就業者は3分の1にまで減っている。縮小し続ける日本の漁業に、なにが起きているのか?本書は、漁業の歴史とデータを紐解きながら、その現状と問題点を大胆に描きだす。知られざる日本漁業の全貌を明かす決定版!
目次
第1章 日本漁業の視座
第2章 過ぎた競争がもたらした矛盾
第3章 海外水域の漁業は今
第4章 資源管理の誤解とその難しさ
第5章 養殖ビジネス、その可能性と限界
第6章 叩かれすぎた漁協とそのあり方
第7章 地域と漁業の今
著者等紹介
濱田武士[ハマダタケシ]
1969年大阪府吹田市生まれ。1999年北海道大学大学院水産学研究科博士後期課程修了。各地の漁村、漁協、卸売市場に赴きながら研究する。2002年東京水産大学助手をへて、現在、東京海洋大学准教授。専門は漁業経済学、地域経済論、協同組合論。水産政策審議会特別委員、釜石市復興まちづくり委員会アドバイザー、福島県地域漁業復興協議会委員などを務める。著書に『伝統的和船の経済―地域漁業を支えた「技」と「商」の歴史的考察』(農林統計出版、2010年、漁業経済学会奨励賞受賞)、『漁業と震災』(みすず書房、2013年、漁業経済学会学会賞受賞、日本協同組合学会学術賞受賞)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
WATA
69
日本の漁業の現状をまとめた問題提起の書。漁業には現代日本の課題が全て含まれているという。消費者側では、少子高齢化により食料消費総量そのものが減少し、その中でも前処理・後始末が大変な魚料理は特に敬遠される。流通では大型スーパーの力が強くなったため、不漁でも魚の卸価格が上げられない。生産者側では、近隣諸国との領土問題、TPP、そして震災復興の遅れなど懸念材料が山積み。本書には漁業関係者からみた水産業の危機的状況が良くまとまっていると感じるが、今後に目を向けると、なかなかうまい解決手段が見つからないのが苦しい。2014/05/23
壱萬参仟縁
23
6次産業化の支援は、個別の異業種連携の推進で、点の支援(043頁)。 線、面的効果が求められる。魚離れの本質は国産魚離れ=調理の外部化の進行(057頁)。北方領土、竹島、尖閣諸島の近海域の漁場は緊張感高まる(123頁)。漁師は自然面のみならず、人為的に命がけの職業となった。 わたしはクルマで交通事故のリスクは常にある地域で暮らしているが、漁師の皆様のご苦労は計り知れない。放射能問題もあり、その点は真実を知りたいところ。漁業権は、漁業利用のあり方と漁村の地域経済のあり方を問うている(219頁)。 2014/08/21
ばんだねいっぺい
19
漁業の暗い話がえんえん続く。2016/08/12
えも
16
水産業の基本を知っておこうと思って読みましたが、ムズカしかったっス。経済の動向や消費者の嗜好の変化が日本の漁業を翻弄していて、課題解決は一筋縄ではいかない感じ。ただ、漁協の持つ本来的な重要性と、その立て直しの必要性を強調していたのが印象的。あと必要なのは、やっぱ漁場の維持保全と魚食の普及かな。2014/06/19
ヒロ
9
噛み合わない、資本・ビジネスの論理と自然の摂理。漁業は漁業とだけ捉えていては全体像が見えてこない。水産業全体に目をやれば、上記の課題も浮かんでくる。2014/06/12