出版社内容情報
他者や社会との「関わり」に困難さを抱える自閉症。その原因は何か。その障壁とはどのようなものか。診断・遺伝・発達などの視点から、脳科学者が明晰に説く。
内容説明
自閉症とは、人との「関わり」に困難さを抱える発達障害である。対人コミュニケーションの困難さと、強いこだわりとを特徴とする「社会的な病理」だ。本書は社会脳の研究者が、その最先端の状況をあぶりだす。自閉症とはなにか。その障害(ハードル)とはどのようなものか。人との「関わり」をどう処理しているのか。診断・遺伝・発達・社会・脳と心といった側面から、その内実を明晰に説く。
目次
第1章 発達障害とは何か
第2章 自閉症スペクトラム障害とは何か
第3章 自閉症はなぜ起こる?
第4章 自閉症者の心の働き1―他者との関わり
第5章 自閉症者の心の働き2―こだわりと才能
第6章 自閉症を脳に問う
第7章 発達からみる自閉症
第8章 社会との関わりからみる自閉症
第9章 自閉症という「鏡」に映るもの
第10章 個性と発達障害
著者等紹介
千住淳[センジュウアツシ]
1976年長崎県生まれ。ロンドン大学バークベックカレッジリサーチフェロー。東京大学大学院総合文化研究科修了。博士(学術)取得。専門は発達社会神経科学。東京大学総長賞、日本心理学会国際賞奨励賞、英国心理学会ニールオコナー賞などを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
35
大変冷静に学術的な態度で、これから進むべき道を示されている。特に遺伝に対する決め付けを改める指摘は重要で、これだけでも読む価値がある。謙虚で、諦めない姿勢には頭が下がる。しかし同時に、日本人の文化を変える努力も必要だと、どうしても言わずにおれない。余りにも「空気」に依存し過ぎではないだろうか。争いを避けるための知恵が、結果的に宗教以上に人の心を縛り付けている。風潮とかでなく大昔からの文化だから、克服するのは難しいが、ダイバーシティなどもその向こうに有るのではないかと思う。2016/11/27
佐島楓
22
2013年から「自閉症スペクトラム」の中に「アスペルガー症候群」などが包括されるようになったこと、まだ研究途中の事項が多く、詳しいことは一部しかわかっていない、などと書かれていた。具体的な症状については、細かく記載されている印象を受けた。参考文献が英語の論文ばかりという難点はあるものの、個人的には好感を持てる本でした。2014/03/08
めん
10
著者は基礎研究者。本書では自閉症について遺伝子、認知、脳、社会などの側面から解説。言葉に誠実さを感じる。/以下抜粋•自閉症に影響を与える遺伝子は、数多く存在。が、自閉症になるかを決める遺伝子はおそらく存在しない。•ことばや知能の発達に困難さを持たない自閉症児は11〜12歳で‘誤信念課題’を通過できる人が増える。ただ、‘心の理論’は素早く自発的には動かない。•自閉症者の‘くっつきやすくはがれにくい’注意は何に対しても起こるものではなく、‘何に’に注意を向けているかによって変わる可能性も。/5年も積んでいた…2019/11/07
がりがり君
10
千住 淳2014 割としっかりとした本だという印象を受けた。発達障害が不思議地なように定形発達というのも不支持な存在に思えてくる。人はどうやって社会性を身につけるのだろうか。あと遺伝子レベルでの研究は過渡期だが脳が核的には研究はだいぶ進んでいる。みんなが社会性を身につけて発達してるのに自閉症スペクトラムの人は社会性を身に着け残って発達してる。言ってみれば男子校に女子が唐突に入学しちゃったみたいな話でそれは生活しづらいよねと。2018/01/07
しゅんぺい(笑)
8
自閉症、ひいては障害というものは一体なんなのか、そのことを考えさせられる本。 障害は結局、個人と社会の関係のなかでできているということ、その通りやと思う。 最後のあたりの章に出てきた、「定型発達症候群」のくだりは、珠玉。 いまの社会で「普通」とされていることが客観的にはぜんぜんそうではなくて、なんやろうな、自分とちがう人間全般とかかわっていくそのかかわり方そのものを考えさせられる。2014/02/06