出版社内容情報
街には格差があふれている。古くは「山の手」「下町」と身分によって分断されていたが、現在もその構図は変わっていない。宿命づけられた階級都市のリアルに迫る。
内容説明
「格差」が問題視されるようになって、はや数年。ついに格差は、風景にまで現出してきた。小さな木造家屋が建ち並ぶ下町に、富裕層向けマンションが建設され、昔ながらの街の景観は破壊される。同時に、地域間の格差は拡大し、富めるものは富める地へ、貧しいものは貧しい地へと、振り分けられる。そして、「山の手」「下町」といった歴史的な境界線は、都市をより深く分断する。まさに「階級都市」の出現である。本書では、理論、歴史、統計、フィールドワークなど様々な視点から「階級都市」の現実に迫る。
目次
第１章 風景としての格差社会
第２章 なぜ「階級都市」なのか―都市構造と資本主義
第３章 異国の風景―「下町」と「山の手」の言説史
第４章 進行する都市の分極化―統計でみる階級都市
第５章 階級都市を歩く
第６章 階級都市から交雑都市へ
著者等紹介
橋本健二［ハシモトケンジ］
１９５９年生まれ。東京大学教育学部卒。東京大学大学院博士課程修了。静岡大学教員などを経て、武蔵大学社会学部教授。専門は社会学（階級論）（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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mazda
18
平均寿命を23区別に見ると、やはりというべきか、西高東低の傾向があるようです。年収も同じような傾向にあるので、年収が低いと寿命も短くなると言えるのでしょうか？単純な区分けでは全てが見えてこないとは思いますが、大雑把に傾向を掴むにはいいのかも知れません。2018/12/01
Shin
13
いわゆる「都市論」や「東京論」が好きでいろいろ読んでみたけど、明確に「東京の格差」を切り口とする本は初めてで興味深く読んだ。前半の都市理論から、統計的な論考、フィールドワークという流れが無駄なくコンパクトにまとめられており、扱うテーマにしては中立的で学問的良心が満ち溢れていて安心して読める。理論的に目新しいものは少ないが、東京の山の手と下町の間には「国境」が存在し、その社会構造が都市の形態として投影されていることについて、そこに住む我々ももう少し関心を持って観察してみるべきではないだろうか。2012/08/14
浅香山三郎
12
都市の空間構造は、階級社会が可視化されたものだといふ。 階級都市としての東京を､資本主義と都市の構造とに関する理論面から述べ、下町と山の手をめぐつて形成された言説、23区の実態分析､まちあるきの順で深掘りしていく。 その理論から実際の風景を見に行くまでの､話の運び方のバランスもよく、社会学的な成果のみならず、格差をめぐる昨今の様々な視角と相乗効果をなすのがよい｡ 東京で見られることは、全国の大都市でも見られる。下町に突如出現するタワーマンション､格差の入り混じつた風景と住民の分断は、大阪でも同じである。2016/01/08
kenitirokikuti
11
図書館にて。新しい都市社会学。サッセン『グローバル・シティ』やカステル『都市・情報・グローバル経済』など。かつて都市には工場があり、労働者が都市に住んでいたが、サービス業の進展などにより、労働者や油臭い商工業者の居住地が投資・投機の対象となる。都市の貧困地域が富裕地域に作り替えられる。テレ朝のアニメ『セーラームーン』の舞台は麻布十番商店街や赤坂だった。六本木ヒルズが出来るのは21世紀(そういや、テレ朝のオリジナル深夜アニメ『スピードグラファー』とかあったなぁ)2021/03/21
まさこ
8
23区それぞれの微細なエリアで暮らしぶりは大きく違い地形に由来することが多い。資本家階級ってどこで線引き？中学国語テストって私立の子は受けない？など感じる所は多く、格差テーマだと切り口がえぐいね。居住地のソーシャルミックスは、社会へ、他者への想像力を培う上で魅力に感じるが熟成時間が必要。落下傘的に資本が投下された所はやはり浅知恵、この状況にジェントリフィケーションという単語はなんだかな。格差は差別と対立を生むというが旧住民に対立する力は残っているか。ブランドではなく住みたいと感じる街を自分の足で探したい。2019/08/24
