内容説明
没後十年以上の時を経て、その思想の意義がさらに重みを増す哲学者ドゥルーズ。しかし、そのテクストは必ずしも読みやすいとはいいがたい。本書は、ドゥルーズの哲学史的な位置付けと、その思想的変遷を丁寧に追いながら、『差異と反復』『意味の論理学』の二大主著を中心にその豊かなイマージュと明晰な論理を読み解く。ドゥルーズを読むすべての人の羅針盤となる決定的入門書。
目次
第1章 ドゥルーズの「哲学」とは何か(内包性と潜在性;十九世紀という文脈 ほか)
第2章 ドゥルーズと哲学史(ドゥルーズのコンテクスト;テクストの存在論化的読解 ほか)
第3章 『差異と反復』―ドゥルーズ・システム論(二つの主著;反表象主義の哲学 ほか)
第4章 『意味の論理学』―言葉と身体(『意味の論理学』について;静的発生と動的発生 ほか)
第5章 ドゥルーズ=ガタリの方へ―文学機械論(ドゥルーズと文学―ドゥルーズと言語;クロソウスキー論 ほか)
著者等紹介
檜垣立哉[ヒガキタツヤ]
1964年埼玉県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中途退学。大阪大学大学院人間科学研究科准教授。専攻は哲学、現代思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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またの名
11
入門と銘打ったがためのあまりのボロクソ評価に同情。ドゥルーズ入門としては國分氏の決定版が出たことで、本書の価値はより中級者以上向けの解説と整理に位置づけられるべきなのかも。しかし実際、『差異と反復』の三つの時間論も副次的矛盾も判明かつ曖昧も潜在性の現働化も問いと問題も『意味の論理学』の発生論もパラドックス的要素も良識・常識に対する無意味も深層と表層も文学機械も手堅く簡潔に解る話にされているので、これでもダメなら同著者によるNHK出版の「哲学のエッセンス」にでも頼るしかない。そう言い切っていいほどの良書。2014/09/01
ゆとにー
10
読了。ドゥルーズの発生論を系譜的に位置付け、主著である『差異と反復』『意味の論理学』の二冊の骨格を提示する。前提知識が多いので初学者は別の本をめくりながら読む必要がある。『意味の論理学』の章は補助線となるような蓄積も持たなかったのでトピックとトピック同士のつながりをチェックするやり方に切り替えた。キャロル、アルトーのパラドックス、フロイト、ラカン、メラニー・クラインの精神分析、静的発生の二つの水準と動的発生で語られる構図の全体、風刺・ユーモア・イロニー、マルクス主義、機械…。学習すべき事項は多い。2018/10/25
さえきかずひこ
10
本書の前半はドゥルーズに大きな影響を与えたベルクソン、ニーチェそしてスピノザについて触れられているので読みやすいが、後半の『差異と反復』『意味の論理学』をめぐっての解説がほとんど理解できなかった。著者は前期ドゥルーズの考え方が後期にも大きく寄与したと再三強調する。彼の哲学に取り込まれた先人の哲学に加え、生命科学や数学の素養のある読者にはドゥルーズの思想はそれなりにつかみとることができるものなのかもしれない。2017/12/19
hitotoseno
10
まあよく考えてみてほしい。本邦におけるドゥルーズといえば70年代には散発的な翻訳がなされただけで、80年代になると浅田彰の登場と共に一気にムーブメントが起きたが、翻訳は専門外の学者によって行われるきり、よき理解者と思しき浅田や蓮實重彦は訳業にほとんど携わらず、丹生谷貴志や宇野邦一が出てきても相変わらずドゥルーズはわかりにくいまま、ソーカル事件などもあいまって蔑称としての「ポモ」を代表する学者としてとらえられていた。90年代までは、ドゥルーズはよくわからん軽薄な学者だったのである。2016/02/14
フリウリ
8
あとがきで檜垣氏は、渡邊二郎さんがハイデガーを神格化、神秘化せずに「通俗化」したように、ドゥルーズも「通俗化」することが必要だ、と述べていて、本書はその「通俗化」に沿った線で、書かれているようです。たぶん「哲学屋」さんに向けて書かれているので、一般読者には難しく感じられるのだとおもいます。わたしも、もちろんさっぱりでしたが、いろいろな読み方でいいよねと、一般読者的に割り切りました。「入門と名乗る本に入門書なし」との格言?を思い出しました。72024/03/28