内容説明
環境を破壊して繁栄を謳歌し、諸欲によって我が身の破滅を招く…。人間の本質を、病原体から読み解く理不尽すぎる行為の謎。
目次
第1章 病原体の環境と人間の環境(「環境あっての生物」という原則に反する存在;宿主―寄生体関係の起源とは ほか)
第2章 生物としての病原体(細菌に寄生するバクテリオファージ;本来の環境を失った生物のありよう ほか)
第3章 いろいろな病原体の生き方(予防接種とは免疫のしくみを利用し直すこと;ヒトは破傷風菌の生態に影響力を持たない ほか)
第4章 病原体としての人間(環境と生物は対等の関係にある;環境の論理と寄生体の論理 ほか)
第5章 人間特有の生き方(複数の個人を宿主とする寄生体としての「公」;記号による世界は時間的に存在する ほか)
著者等紹介
益田昭吾[マスダショウゴ]
1941年生まれ。66年、東京慈恵会医科大学卒業。07年、東京慈恵会医科大学教授を退任。現在は同大学名誉教授。卒業以来、一貫して黄色ブドウ球菌の病原性の研究に従事。細菌の病原性を通じて医学と生物学の関係に深い関心を抱く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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baboocon
17
病原体が人体にとって害となる感染症を引き起こすのは、人体が病原体の本来の環境ではないから、というのが本書の核となる概念。生物学的な話が続くのかと思いきや、後半は人間の自我意識と身体や自然環境の関係を前半で述べる病原体と宿主の関係に喩えていて、哲学的な色合いが濃いと感じた(著者自身は病原体研究の専門家)。内容の是非は賛否両論あると思うが、その視点は面白い。文化やお金についても同様のアナロジーで解説しようとしている。2011/12/27
壱萬参仟縁
11
ルビンの盃を用いて、白く円形に塗ったものを「生物」に、黒い部分を「環境」に譬えて、「生物が存在しなかった旧い世界から生物が物として現れてくると同時に地としての旧世界は生物を支える環境へと変化する」(131頁)とされている。生物としての人間が、環境から病原体を取り込んで罹患するが、同時に、病原体としての人間ならば、他人に感染源ともなってしまう。この、人間の両義性は深いと思うと同時に、だからこそ、他人の健康には十二分な配慮が求められているのだ。わたくしも、どこのお客様宅に向かう時でもこの時期はマスク着用です。2013/12/31