内容説明
「ヒトヅマ」―既婚女性を意味するこの平凡な単語が、なにゆえ男たちの胸に、かくも狂おしく淫らに響くのであろうか?本書では、近・現代の文学作品や映画、ドラマ、歌謡曲のなかで性的関心の対象として描かれてきた人妻像を手がかりとして、男を惹きつけてやまぬ彼女たちの魅力の核心に肉薄するとともに、彼女らを恋愛や不倫へといざなう「仕掛け」について明らかにする。妻を知り己を知るために必読の一冊。
目次
「人妻」は魅惑的?―序に代えて
第1章 鹿鳴館は浮気天国?
第2章 「ブランド」としての人妻―鎌倉夫人
第3章 ファッション誌の花形夫人―芦屋マダム
第4章 「マダム」は魔性のオンナ?
第5章 人妻は「都合のいい女」?
第6章 「不倫」の時代
結婚しない時代(?)の人妻―あとがきに代えて
著者等紹介
堀江珠喜[ホリエタマキ]
1954年兵庫県生まれ。中学から大学院修士課程まで神戸女学院に学ぶ。神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。大阪府立大学教授。学術博士
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感想・レビュー
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ふろんた2.0
24
小説やドラマから、人はなぜ人妻という言葉に色めき立つのか、また、対象を夫人、マダム、未亡人にまで広げて考察。鹿鳴館の実態、芦屋マダムなど勉強になりました。住んでいる場所や家系が付加価値を生み出すとしている一方で、働く女性は職業で人妻の価値をかき消してしまうと説く。例えば、人妻で弁護士であるより、夫が弁護士である妻のほうが高ポイントなのである。中身は人妻本としては『なぜ人妻はそそるのか?』のほうに軍配かな。後発だしね。2015/09/15
すうさん
3
「人妻」というなんとなく色っぽい響きが気になって読んだ。時代によってその響きもずいぶん変わるのが分かった。いろいろな小説を、「姦通」や「浮気」と絡ませて、さいごの「不倫」という表現に至る背景を解説してあったがそれ自体はダラダラとしてつまらないと思った。源氏物語のように、道ならぬ恋が物語を彩るように、このテーマは一般的であり、男と女の物語は一方的な視点で進んでいくのであり、男女が協議して恋愛を進めるわけでないからだ。だからこそ言葉にならない表現こそが、想像掻き立て、物語に「色」を添えていくのだと思う。2019/01/27
永遠にハロウィン(★1:☆0.5)
2
★★⭐︎2023/03/27
Humbaba
2
人妻という存在が特に性的な存在として認知され始めたのは近現代に入ってからである.文学作品や歌謡曲,そして映画やドラマなどでそれが描かれていくことで,男をひきつける存在として認知されるようになってきた.2010/06/25
(まだない)
1
現代においていやらしい響きを持つ「人妻」ということばについて、古今の文学作品や各種メディアを通してまじめに「研究」した本。「人妻」が好んで使われるようになったのは最近だそうで、その他に性的関心の対象として「夫人」「マダム」「未亡人」といった語も研究対象になっている。明治の文豪には「鎌倉夫人」、女性ファッション誌には「芦屋マダム」、映画では「軽井沢夫人」が使われているそうで、「地名+夫人」は一種のブランドになるらしい。著者は神戸女学院卒・神戸大大学院修了の大阪府大教授。(2015/04/7読了)☆2.0点 2015/04/07