内容説明
八〇本近い作品を生み出し、いまなお現役である稀有な映画監督・山田洋次によって演出された「なつかしい日本人」の正体をいま解き明かす。初期の喜劇から、シリーズ「男はつらいよ」、さらには国際的な評価を受けた時代劇まで、全作品を一次資料から徹底的に検証。そのエネルギーは死に向かうことで生まれ、「少女」への禁欲がマドンナに内包される。そして「バカ」と呼ばれた人間が鏡となって映し出すものとは?―多面的な考察を通して、日本一国民に愛されている巨匠が持つ「隠し剣」の閃きを感じ取る。
目次
第1部 山田洋次は何を見せたのか(山田映画は「入れ子」である;「現在」から出遅れているという普遍性;山田洋次が描いたもの)
第2部 幻風景の向うにあるもの(寅さんという「幻」;山田洋次の「原」風景;山田洋次の「バカ」とは何か;マドンナへ向かう「力」)
ひとまずのエピローグ 虚を衝く秘剣―山田洋次の示す明日
著者等紹介
切通理作[キリドオシリサク]
1964年東京生まれ。和光大学卒。文化批評。『宮崎駿の「世界」』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞
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