内容説明
二〇世紀哲学における最大の巨人ハイデガー。半世紀以上にわたり、彼の思想があらゆる知の領域に及ぼしてきた圧倒的な影響はいうまでもない。大いなる成功と絶望的な無理解の断層に屹立する今世紀最も重要な哲学書『存在と時間』。その本当の狙いとは何か?本書は、難解といわれるハイデガーの思考の核心を読み解き、プラトン、アリストテレス以来西洋哲学が探究しつづけた「存在への問い」に迫るとともに、彼が哲学者としてナチズムのなかに見たものの深層に光をあてる。ハイデガー哲学の魅力の源泉を理解するための一冊。
目次
序章 『存在と時間』とは何か
第1章 存在への問い
第2章 存在の意味への問い
第3章 現象学
第4章 現存在の分析論
第5章 形而上学
第6章 ナチズム
終章 展望
著者等紹介
細川亮一[ホソカワリョウイチ]
1947年東京生まれ。東京大学文学部卒業。東京大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程修了。1984年-86年フンボルト奨学生としてドイツ留学、1995年-96年アメリカ合衆国留学。文学博士。現在、九州大学大学院人文科学研究院教授。著書に『意味・真理・場所』(創文社)、『ハイデガー哲学の射程』(創文社)、『現代哲学の冒険〈1〉/死』(共著、岩波書店)、『幸福の薬を飲みますか』(編著、ナカニシヤ出版)、の他、訳書に『真理の本質について』(『ハイデッガー全集』第34巻、創文社)などがある
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
38
現存在=人間、存在者=人間以外のモノと逐語的に解釈して読むこととは別の入り口を示してくれる本。入門書とはいえない難しさと明快さが同居する。存在(ある)に対する問題が、そもそも読者の方に前もってあるだろうか。「美しいもの」は想起できるが、「美」は容易に想起できない。同じく、存在者(あるといわれるもの)は想起できるが、存在(ある)は想起できない。存在(ある)が難しいのは、その純度を極めると観念的だが、その意味するところは観念から最も遠いところにあるからである。2023/07/05
たばかる
25
「『存在と時間』の拡大鏡と哲学書の読解の注意」みたいな題だと思うといい?こういう入門もあるのね...が正直な感想。前半は「存在と時間」を様々にレンズを変えながら見ていく。後半にはハイデガーの思想の転向、ナチズムとの関わりを示す。/形骸的な理解や思想の盲信を読者に向けて繰り返し注意を促すところは、入門書らしいというのか?/存在と時間へのいくつかのアプローチの仕方は掴めたけれど、実践まではできそうにない。その点は、簡単な解説で分かった気になって欲しくないという筆者の意向を汲んで、もう少し頑張って読んでみる。2020/02/12
加納恭史
15
ウィトゲンシュタインも読んだが、二十世紀の哲学の最大の巨人はやはりハイデッガー。とりあえずこの入門書を読む。ショーペンハウアーのカント哲学やドイツ・ロマン派の関連では最有力かな。仏教的な苦の哲学がないのが残念。かわりにニーチェ批判かな。ハンナ・アーレントの哲学ではナチス批判はあるが、ハイデッガー哲学を上手く引き継いで欲しかったな。解説書であるし、著者の細川亮一さんはプラトンやアリストテレスの哲学を中心に語る。カントの関連も論じて欲しかったが、この本の厚さから無理。それでもギリシャ哲学からの解説は見事だ。2023/11/28
さえきかずひこ
15
『存在と時間』で展開される基礎存在論には、アリストテレスの存在論が根源的に関わっていることをテクストにもとづいて明らかにし、前期ハイデガー哲学の射程のもつ広遠さを映し出す一冊。章立てもとても明晰で、『存在と時間』を理解するために的確かつ有用な構成になっている。本書はハイデガー哲学の入門書だが、それにとどまらず、読者が自身の目と頭で『存在と時間』そのものに触れるよう繰り返し促している点も印象的。また、ハイデガー哲学の難解な主張を神秘化・神格化せず、批判的に読み解くよう配慮している点も良心的で心に残った。2018/12/30
かんがく
13
ウィトゲンシュタイン、レヴィナスを読んだので両者と関係の深いハイデガーを読む。わからないところを飛ばして読むことを、著者は「漢字を知らない子供の読み方」として厳しく批判する。まさに私の読み方である。そこで苦労しながら愚直に読んでいくと、「ここは難しいが、これがわかっていれば大丈夫である」的な優しさをくれる。そして、結局はほとんど理解できなかったのだが、「わかりやすい作り話によってわかったつもりになることよりも、何もわかっていないことを知ることのほうが一層よいことである」と励ましてくれる。良い人。2018/11/13