内容説明
日本の社会経済システムの特質は、状況に対する優れた適応能力にある。戦後五十年、その能力をフルに活用して、労働と産業と社会を重視するシステムを作り上げてきた。けれども、いま直面しているのは、カネと情報が瞬時に国境を超えて移動する制御不能な事態である。日本はそれに対して、アメリカ型の社会経済構造に転換しようとしているが、その「資本主義革命」の行き着く先は、社会経済そのものの「持続可能性」の破壊でしかない。日本型システムの「改革」をめぐる混乱に終止符を打ち、再生への道筋を示す。
目次
第1章 幻想の改革
第2章 資本主義の発見
第3章 大英帝国の世紀をさぐる
第4章 覇者アメリカの革命
第5章 日本型システムの正体
第6章 グローバリズムを超えて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
taming_sfc
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宮本光晴先生による2000年の著作。表題は、日本資本主義および市場原理を超えて、となっているが、本書の最も秀逸な点は、資本主義を形態論的に分析することにある。また、第一次産業革命、第二次産業革命、第三次産業革命、によって資本主義の形態に変容が生じてきていることを形態論的に分析する。グローバル経済は、ネーションがなければ成り立たないという逆説的真理を提示しているところも興味深い。資本主義のあり方が問われている現在、少し難しいかもしれないが大学教養課程で読破すべき著作の一つといえる。2011/03/11