内容説明
日清戦争から十五年戦争にいたるまで、日本を貫いてきた侵略思想とは何だったのか。明治期、西欧に対抗するべく強大国家=覇権国家を建設する過程で形成された帝国主義は、なぜ南京大虐殺や慰安所設置に代表される暴虐を生み出したのか。歴史事実の実証を通じて、自己本位の侵略思想が再生産される構造と体質を明らかにするとともに、歴史認識の共有による「平和的共存関係」への道を探る。
目次
第1章 侵略思想の源流を探る
第2章 日中戦争から日米戦争へ
第3章 日独同盟関係のゆくえ
第4章 国体護持と支配層温存の試み
第5章 天皇制軍隊の特質と戦争の実態
第6章 残された課題は何か
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coolflat
13
天皇はポツダム宣言受諾による「和平」の可能性を期待はしたが、軍部強硬派のクーデターや反乱の恐れから、即時受諾に踏み切る事はできなかったという“弁解”が今日風説されているが、それを額面どおりには受け取る事ができないと指摘する。天皇は宣言受諾でなく、ソ連を仲介とする「国体護持」が確定されるまで、本土決戦に望みを繋ぎ、徹底抗戦の体制を整えようとしていた。広島・長崎の原爆は天皇の自己保身の結果だという事だ。『安保条約の成立―吉田外交と天皇外交』にもあるように、天皇の戦後の振舞いを見ても、本書の指摘には納得がいく。2015/08/14
樋口佳之
7
5章天皇制軍隊の特質と戦争の実態が特に心に迫ってくる内容でした/天皇の軍隊は所詮は封建的秩序を最後まで色濃く残した、言わば〝疑似近代的軍隊〟に過ぎず/国自身が疑似近代的国家、国民もまた同様であったのでしょう。そして現在は?と考えてしまいました。2016/07/25
おらひらお
5
1999年初版。戦争への道は、軍部・財界・民衆の意思であったと指摘。民衆=被害者ではないのですね。著者が言いたいことはわかりますが、国と国の交渉では綺麗事だけではすまないような気もします。あと、美化されがちな海軍の立ち位置にも厳しい視点で分析されています。2015/11/26
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