内容説明
ルサンチマンの泥沼のなかで「神」や「超越的な真理」に逃避するのか、あるいは「永遠回帰」という「聖なる虚言」に賭け、自らの生を大いに肯定するのか?二十世紀思想最大の震源地ニーチェの核心を果敢につかみ、その可能性を来世紀に向けて大胆に提示する、危険なほどに刺激的な入門書。
目次
第1章 はじめのニーチェ(生涯;ショーペンハウアーとワーグナー;『悲劇の誕生』について;『反時代的考察』について)
第2章 批判する獅子(キリスト教批判―『道徳の系譜』について;「道徳」とルサンチマン;「真理」について;ヨーロッパのニヒリズム)
第3章 価値の顛倒(「超人」の思想;「永遠回帰」の思想)
第4章 「力」の思想(徹底的認識論としての(認識論の破壊としての)「力への意志」
生理学としての「力への意志」
「価値」の根本理論としての「力への意志」
実存の規範としての「力への意志」)
著者等紹介
竹田青嗣[タケダセイジ]
1947年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。明治学院大学国際学部教授。自分を深く知るために、他所とほんとうに関わるために哲学するユニークな思想家としてますます活躍中。大学では「人間論」を担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さゆ@俳句集販売中
156
善悪を生物的な欲求の正直さに、また、ルサンチマンをユダヤ人の自己批判精神に依拠するのは今では疑問もあるが、永劫回帰の4分類は面白かった。宇宙を穴のないビリヤードとする機械論的永劫回帰、人生を無意味と捉えるためのニヒリズム的永劫回帰、神や道徳を批判し次の哲学へ繋ぐための理想形成的永劫回帰、生を肯定するための超人的永劫回帰。個人的には、BTFで主人公も父も祖父も寝坊していたように、遺伝的な永劫回帰で捉えていたので解釈が広がった。とはいえ、ドゥルーズは既に、同一の反復ではなく同一性の反復として捉えていたよう。2024/03/25
青蓮
113
「神は死んだ」の一言で有名なニーチェ。数年前、ニーチェブームが起きた時に彼の著作を手に取ったことがあるのですが、盛大に挫折した経験があります。もう少し優しいものから読んでみようかなと思い、本書にチャレンジ。本書は比較的、解りやすく書かれていると思うのですが、掴みきれてない部分も多々あり、要勉強かなぁと言うところ。キリスト教批判についての項目がとても興味深く、面白く読みました。またじっくり再読したい本です。もう少し予備知識を増やしながら、ニーチェの著作にも再チャレンジしたいと思ってます。2016/03/27
harass
60
出版直後に読んだ覚えがあるが読み直し。同時期に同じ思想家の本をまとめて読んでいるが、この本はどちらからというと教科書的、いわば通説的な内容。中島義道のアクだらけの入門書とくらべて物足りない。正反対のところもあるし。中島本が特殊なのか…… ほかの解説本などと読み比べているが、各本の解釈の違いにいろいろ戸惑う。ニーチェ自体がとんでもなく振幅の激しい読まれ方をされた思想家でその概念の解説を新書の薄さですること自体無謀なのかもしれない。2017/03/04
抹茶モナカ
52
ニーチェの関連用語として目にした事のある単語、例えば、ルサンチマンや超人といった言葉から、ニーチェの思想をわかりやすく説明してくれる本。キリスト教批判って、格好良い。晩年は悲しいニーチェだけど、力強く生きようとしていたんだろうなぁ。自分の中のニーチェ熱から読んでみた。2016/04/27
ももたろう
35
かなり面白かった。個人的な感想としてニーチェは「キリスト教それ自体」を批判しているのではなく「キリスト教の教えに依存する人間達」を批判していると私は捉える。善悪の基準も、苦悩への対処も、それを何にも頼らず一人ですることに人は不安を覚える。そこで「神」や「イデオロギー」など自分以外のものへと救いを求めるが、そうじゃないと。自分以外のものに寄りかかるのではなく、お前自らが価値を創造しろと。そのモデルとして「超人思想」を提示した。キリスト教批判は激烈だけど、そこには非常に深く巨大な人間愛が確実にある。2016/11/28