出版社内容情報
二十五年間にわたる個人訳、全巻ここに完結。最終巻は、善と悪とが縒り合された人物たちが、とめどなく刺激的な言葉を繰り出す問題劇。解説 前沢浩子
内容説明
前伯爵の主治医の遺児ヘレンは現伯爵バートラムに恋をしている。フランス王の難病を治して夫を選ぶ権利を手にし、憧れのバートラムと結婚するが、彼は彼女を嫌って逃亡、他の娘を口説く始末。そこでヘレンがとった行動は―。善と悪とがより合わされた人物たちが、心に刺さる言葉を繰りだす問題劇。松岡和子個人訳シェイクスピア全集、完結。
著者等紹介
シェイクスピア,W.[シェイクスピア,W.] [Shakespeare,William]
1564‐1616。イギリスの劇作家・詩人。悲劇喜劇史劇をふくむ37編の脚本と154編からなる14行詩(ソネット)を書いた。その作品の言語的豊かさ、演劇的世界観・人間像は現代においてもなお、魅力を放ち続けている
松岡和子[マツオカカズコ]
1942年、旧満州新京生まれ。東京女子大学英文科卒業。東京大学大学院修士課程修了。翻訳家・演劇評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
114
原題“All's well that ends well‘’ の後にisn't it が疑問や反意のようにあるという印象。最後のコーラスがまた口八丁的なものを匂わせているような。今と時代が違うとしても、「ベッドで入れ替わる。処女を失う行為をすれば夫婦となる」と既成事実だけを積み上げ、気持ちの変化が起こっていたとしても、その間のゴタゴタではすまないことの数々。解説でこのジャンルが「問題劇」とされていることに頷く。バーナード・ショーの批評がしばしば持ち出されるこのシリーズ。バーナード・ショーを読まなくては。2022/02/22
クプクプ
94
「終わりよければすべてよし」はシェイクスピアにしては珍しく男性を女性より上位に置く物語で松岡和子さんもシェイクスピアの作品の中で一番訳しにくい作品だったそうです。性的によろしくない内容で、解説にも書いてありましたが、イプセンの「人形の家」の対極にある物語で、かつては上演も見送られてきた作品だそうです。私は精神年齢が若いせいか面白いと思ってしまいました。ヘレン/石原さとみ、バートラム/藤原竜也で公演されたことがあるそうです。2021/11/27
こうすけ
30
松岡和子さん訳のシェイクスピア全集、最終巻。これにて全巻読了。坪内逍遙、小田島雄二さんにつづき、史上3人目の個人での全訳。この翻訳に出会わなければ、自分がシェイクスピアにハマることはなかったはず。終わりよければ、はシェイクスピアの問題劇のなかでもかなり不可思議な作品。しかし、家柄による格差、女性の生きる選択など、現代的なテーマが込められている。2021/05/01
鐵太郎
25
一読後、思うこと。主人公の名前がもっと派手だったら、華々しい女の生き方として喧伝されたかもしれなかったのに。それともシェイクズピアは、そこまで思わなかったのか。これは、ヘレンという名の中産階層の女性が、そのたぐいまれな能力とけなげな強さによって、大きな障害に屈せず孤軍奮闘で国王の知己まで得て、最上流階層にその座を得て目的を達した物語。まさに、「終わりよければ(多少の問題は無視して)すべてよし」ですねっ!2022/01/11
加納恭史
20
一昨日は西野の林道歩き、今日は由仁町の温泉「ゆんにの湯」へ出かける。景色は良かったが疲れたな。もう秋だなななかまどの実が赤く色づくとき。まとめが遅れていた「終わりよければすべてよし」を再開する。シェイクスピア全集の最後33の作品。題名のように過程もあるが、終わりよければまあ良いのだろうというシェイクスピア晩年の考え方なのだろう。まあお伽噺かな。ルシヨン伯爵バートラムと伯爵夫人の侍女ヘレンの物語。ヘレンがバートラムに好意を抱くことから始まる。また彼女は亡き父親から医療の万能薬の秘密を受け継ぎ、王の病を治す。2024/09/01